現場レポート
東京・練馬のギャラリー呉天華の吉村貴子展「霧の森から」は12月14日まで!
会場風景
彫刻家・吉村貴子さんの個展、吉村貴子展「霧の森から」が2025年11月29日(土)から12月14日(日)まで、東京・練馬区のギャラリー呉天華にて開催されています。200点にものぼるほどのガラスと石によるやわらかな彫刻作品が展示されています。
吉村さんは1986年、東京造形大学造形学部美術学科Ⅱ類卒業。87年、第72回二科展にて特選受賞。2006年、第12回十日町石彫シンポジウムに参加。16年、京都造形芸術大学大学院芸術研究科修了。20年、第59回日本クラフト展にて優秀賞受賞。25年、第2回あさごビエンナーレにて大賞受賞、第6回金沢・世界工芸コンペティション入選。多数の個展、グループ展で活躍中。パブリックコレクションも多数。女子美術大学芸術学部と文教大学教育学部で非常勤講師を務め、後進の指導にも当たられています。
作品「瀑07」白みかげ石
家具(イス)でもあり、会場では座ってもOK。座り心地は極上。「だって私が座りながらつくったからね(笑)」と吉村さん
展示風景
幼少期から美術や海外の民芸品などに興味を持ち、高校の美術科で学んだ吉村さんは、彫刻家が制作した大きな石の作品を見て、触れるうちに、石のパブリックアートに興味を持つようになったそうです。
「普段は気づかなくても、誰かの心が落ち込んでいたり、寂しいときに、ふとその石に触れたらあたたかくなれるような作品をつくりたいと思ったんです。石って硬いけれど、本当はとてもあたたかくて、やわらかくて、気持ちよくて、いつも変わらずに私たちを受け入れてくれるもの。そんな地球の一部である石で、誰かの心に寄り添えるようなパブリックアートをつくりたいと思ったんですね」
そう考えた吉村さんは「石の彫刻家になる」と決意して東京造形大学に進み、厳しい指導のもとで石彫を学びました。
展示風景
作品「それから・それから」ガラス
左は作品「滴04」大理石 / 右は作品「間(あわい)04」ガラス
左は作品「間(あわい)05」 / 右は作品「間(あわい)15」ともにガラス
造形大卒業後も小学校の先生などを務めながら制作を続け、アトリエを構え、さらに石の彫刻を生み出しながら、今度はキャストガラスによる彫刻制作も開始。独学でガラスをまるで石のように造形表現する手法を追求し、現在、細部まで丁寧に仕上げられたやわらかくて透明感のあるガラス作品は、アートと工芸の両分野で高い評価を得ています。
展示風景
左は作品「はじまり02」 / 右は作品「間(あわい)02」ともにガラス
今回の個展では、200点にもなる多彩な形のガラスと石の彫刻作品を展示。「ガラスでは食器や茶器、灯りなどもつくるので、もう全部で何点制作したかな(笑) 時間があれば、誰かに止められるまで制作に没頭しています」と、ますます創作意欲にあふれる吉村さん。
「石もガラスも違う素材ですが、私にとってはどこかでつながっているんです。石とガラスとを行ったり来たりしながら、高校生のときに思った、ふかふかであたたかな彫刻をつくりたいと、いまもずっと追い求めています」
展示風景
作品「空の詩人」ガラス、ブロンズ
一般的に彫刻の展覧会では作品に触れることはできませんが、吉村さんは「作品には触ってほしい」といいます。それはきっと、作者の思い、ぬくもりを作品を通して伝えたいという思いがあるから。
実際に今回もご両親と来場した近所の小さな女の子に「そっと触ってみてね」と声をかけ、その子が少しドキドキしながら作品に触れてはキラキラと笑顔になっていくのがとても印象的でした。
会期は12月14日(日)まで。お近くにお越しの際には、ぜひご来場いただき、吉村さんの作品に触れてみてください。
ガラスと石の作品と、吉村貴子さん
なお、吉村さんは石文社「月刊石材」2025年12月号掲載「石彫の未来へ〜美大・芸大の現場から:文教大学編」に同大学・非常勤講師としてご協力くださいました。
●吉村貴子展「霧の森から」
会期:2025年11月29日(土)~12月14日(日)
時間:12時~17時
休廊日:火曜日、水曜日
会場:ギャラリー呉天華
住所:東京都練馬区桜台6-5-14 パークハイム桜台1F
https://gotenka1.jimdofree.com/
◇吉村貴子公式サイト
https://userweb.ejnet.ne.jp/yytakako/


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