現場レポート

3年ぶり「道具作成・焼入れ講習会」を開催。福島県石材業技能士会

2023.02.14

現場レポート

株式会社石文社

須賀川産「江持石」の採石場に隣接する江持山作業所で開催された「道具作成・焼入れ講習会」のようす。鋼材の7分丸棒から頭と刃先をつくり、2日がかりでノミを完成させました

 

 福島県石材業技能士会(小松多美夫会長)が1月17日・18日の2日間、福島県須賀川市の東北石材石崎商会㈲江持山作業所で新年恒例「道具作成・焼入れ講習会」を開催しました。新型コロナの影響で昨年と一昨年は中止となりましたが、3年ぶりに開催され、県内各地から18名の会員が参加しました。

 近年、特殊鋼工具の普及により、鋼材の焼入れや鍛造を行なう機会が減少し、自分の道具を手入れする技術も失われつつあります。そうした状況に危惧を感じた会員の提案で本講習会がスタートし、同会でも重要行事の一つとして位置づけています。「つくる技術だけでなく、その道具を自分でつくってこそ一人前」ということなのでしょう。

 今回の講習会で制作した道具はノミ。軟石用の7分丸棒が参加者に配られ(硬石用は8分以上)、まず炉(火床)を整え、薪に着火する作業から始まりました。今回は、佐藤達好氏(郡山市、有限会社山好佐藤石材店)と、北住昌洋氏(泉崎村、北住石材店)の2人が講師を務めました。

3年ぶりの開催で談笑しながら和やかな雰囲気で行なわれました


 基本的な作業手順は以下のとおりで、最初にノミの頭部分(持ち手側)をつくってから刃先を仕上げるという方法で完成を目指しました。
 
 ①火入れ
 ②鋼材の加熱
 ③整形(鍛造)
 ④冷却
 ⑤焼戻し

「水桶は2つ用意する(冷却用と消火用)」「鋼の粒子が先端(頭または刃先)に向かうように鍛える」「頭部分の整形で中心部に窪みができたら、そこも叩いて平らにする」「頭頂部が広すぎると、叩いた時の力が分散して刃先に伝わらないため、小さいほうがよい」「鋼材は赤く焼けた状態で叩き、冷めて黒くなったら再加熱する」など、講師の2人が各参加者の作業場を巡回しながら、コツや注意点などをアドバイスし、時には自ら実践して手本を示しました。

 


「製品買いが主流となり、石を加工する機会はほとんどありませんが、墓じまいなどの解体作業でノミを使いますので、こうした技術は必要だし、必ず役に立ちます。また久々の開催とあって、皆さん談笑しながら楽しそうに作業をされていますので、それが一番の収穫です」

 小松会長(写真下)はそう話していました。