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今年の干支「丑」にちなんで、長安寺・牛塔(滋賀県大津市)をご紹介します!


 今年の干支「丑」にちなんで、長安寺・牛塔(滋賀県大津市)をご紹介します!

 この牛塔(うしとう)は、大津市逢坂二丁目の長安寺境内にある石造宝塔です。その昔、この地にあった関寺復興に活躍した牛が入滅し、その牛の供養塔として藤原頼道が建立したものとされています(長安寺ウェブサイトより)。

 高さは335センチ、花崗岩製です(重要文化財)。基礎が八角、塔身が円形、屋根は六角という形状の組み合わせは特異で、鴨長明『無名秘抄』には、この宝塔を指していると思われる記述があることから、平安時代末ごろには造立されていたと考えられています(川勝政太郎著『日本石造美術辞典』東京堂出版、日本石造物辞典編集委員会編『日本石造物辞典』吉川弘文館)。

 作家の白洲正子さんは「私の墓巡礼」(『芸術新潮』1989年8月号)のなかで、この牛塔について、次のように述べています。

 「この石塔(石塔寺三重塔)に匹敵するものは、同じく近江の関寺(今は長安寺)にある『牛塔』であろう。これも墓であるのかないのかはっきりしないが、平安時代に関寺を建てた時、ある人の夢に、材木を運搬していた牛が、迦葉仏(かしょうぶつ)の化身であるというお告げをうけ、藤原道長や頼道をはじめ、多くの人々が牛を礼拝するために集まった。工事が終るとともに、その牛が死んだので、いっそう信仰を深めたいということが、栄花物語と今昔物語にのっている。
 大津から逢坂山へかかる手前の右側を少し入ったところにあり、見上げるように大きく(3.3メートル)、どっしりとした宝塔で、石塔寺の三重塔とは違い、どこから見ても和様で、おおらかな形をしているのが美しい。牛のためにこのような墓を造ったというのも面白いが、実際には迦葉仏の供養塔と信じて建立したのであろう」

 長安寺・牛塔は京阪電車京津線「上栄町駅」下車、山手へ徒歩3分のところにあります。近くへ行った際は、是非お立ち寄りください。

※撮影:2015年

◎関寺霊跡 時宗 長安寺
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