「いい石」をつくる石工たち
本サイトにおける「いい石」とは、日本の石を素材として、日本の石工さんが心を込めてつくった石製品のことです。
石工:兼子裕司(石大・兼子石材店、滋賀県近江八幡市)
難しくもあり、楽しくもある石彫刻の魅力とは
「ノミの一振り一振りで石に命を吹き込む技は、難しくもあり、楽しくもあります。石そのものは硬いのに柔らかさを感じるところが一番の魅力です」
創業は江戸時代後期の天保元(1830)年。滋賀県近江八幡市の石大・兼子石材店6代目の兼子裕司さんはそう話します。兼子さんは、石都岡崎で狛犬づくりを得意とする成瀬石材商会(廃業)で6年近く修業した経験があり、家業を継いだ現在は「石彫刻のできる墓石店」として多忙な日々を過ごしています。創業年は、初代と2代目が使っていたふいご(ノミ焼き作業に使う送風道具)に残されていた銘を根拠としたもので、屋号の石大は、3代目の「石屋の大吉」に由来するそうです。
兼子さんが制作した狛犬。地元の神社に納めた
近江石工ならではの宝篋印塔を制作
「6代目として生まれたときから、石に触れ、石とともに生きてきました。私から石を取ったら何も残りません。石工として積み上げた彫刻の技は、墓石にも生かされています」
兼子さんが所属する滋賀県石材組合連合会の40周年記念事業では、自ら立候補して、香川県高松市産の最高級墓石材「庵治石(細目)」使って、総小叩き仕上げの宝篋印塔を制作しました。
宝篋印塔は基本的に四角い部材を組み合わせた「角モノ」と呼ばれる伝統的な墓石です。数多くの石造文化財や名品が存在する滋賀県には、宝篋印塔や宝塔に「近江式装飾文様」と呼ばれる独特の意匠表現があり、兼子さんはその近江石工に伝わる伝統文化に倣って宝篋印塔を制作しました。
格狭間(基礎石の側面部分)に3本の茎の蓮(三茎蓮)や孔雀の文様などを彫刻し、塔身には金剛界四仏の種子(梵字)を「薬研彫り」と呼ばれる伝統的な技法を用いて完成させました。
兼子さんが滋賀県石材組合連合会の40周年記念事業で制作した宝篋印塔
近衰えることのない、ものづくりの原動力
もともと向上心は旺盛で、修業5年目の24歳のとき、イタリア、フランス、スペイン、イギリスを訪問し、現地の採石場や彫刻工房、建築石材業者、サグラダファミリア、大英博物館などを12日間かけて見て廻りました。40歳になると、それまで興味のなかった小説を読んだり、映画や舞台などを見て感性を磨き、50歳を過ぎてからは絵を描くことにも挑戦し、いままでやらなかったこと、知らなかったことにできるだけ目を向けるように心掛けているとのこと。その好奇心や向上心がものづくりの大きな原動力となっているようです。
兼子さん2024年に制作した釈迦苦行像(庵治石製)。滋賀県近江八幡市のJR安土駅前にある袈裟匠・草戸庵(植田浄光代表、写真右)に納めた。関連記事あり(庵治石細目で釈迦苦行像を制作 石大・兼子石材店)
ものづくりに終わりなし
「つくることは面白い。ものづくりに終わりはない」と話す兼子さん。そんな兼子さんの作品からは、石工としての揺るぎない自信と誇りが感じられます。
基本情報
兼子裕司(石大・兼子石材店、滋賀県近江八幡市)
滋賀県近江八幡市安土町常楽寺602
兼子裕司(石大・兼子石材店、滋賀県近江八幡市)のいい石一覧
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