現場レポート

東京:SDレビュー2025で建築家・小野直輝氏の「還る墓」に注目!

2025.09.30

現場レポート

株式会社石文社


SDレビュー2025小野直輝氏「還る墓」展示風景
©Hamed Sékou Touré



「SDレビュー2025(第43回建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展)」が2025年9月19日から28日まで、東京・渋谷のヒルサイドテラスF棟ヒルサイドフォーラムにて開催されました。

「SDレビュー」は、建築物を実際に「建てる」という厳しい現実のなかで、設計者がひとつの明確なコンセプトを導き出す思考の過程を、ドローイングと模型によって示そうとする展覧会。実現見込みのないイメージやアイデアではなく、実現作を募集し、今回は審査員(青木淳氏、冨永祥子氏、満田衛資氏、増田信吾氏 / アドバイザー:隈研吾氏)により審査・選抜された12作品が発表されました。

いずれの作品も注目ですが、特に石材業界として見逃せないのが、建築家・小野直輝氏による「還る墓」です。

こちらはみやぎ霊園(宮城県仙台市)に新たにオープンする墓地の設計デザインで、約400区画の墓所と休憩所、合祀墓等を新設する予定です。すでに工事は着工していて、来春オープン予定です。


SDレビュー2025墓域全面に配される小川に沿って、各墓所が配置される(約400区画)
©Hamed Sékou Touré



もとの地形を生かした墓域全面に山の湧き水を利用した小川を配し、その水の流れに沿うようにそれぞれの墓所を配置していきます。墓所には伊達冠石の自然石を置き、一面を磨くことで流れる水面を映します。伊達冠石の墓石は、使用者が希望すれば産地である大蔵山でも選べるように計画されています。


SDレビュー2025墓石には伊達冠石の自然石を使用し、水面を映す一面を磨く
©Hamed Sékou Touré



墓所は家族だけでなく個人でも入れるように有期限の仕組みを採用予定。墓石としての役目を終えた伊達冠石は、いずれみやぎ霊園の隣の山へと還ります(別途、彫刻銘板あり)。


SDレビュー2025伊達冠石サンプルの展示
©Hamed Sékou Touré



小野直輝氏は「墓標をもたない樹木葬や散骨を望む人が増えつつありますが、人々が石に故人を重ねて思いを馳せることは、後世に残すべき人間の営みと考えます。各区画が整然と並んだ墓地とは異なり、ここでは墓石が互いに影響し合い、大きな風景の一部となります。流れる水とそれを反射する伊達冠石の風景が、みやぎ霊園に集う人々をゆるやかにつなぐ場となることを期待しています」と話しています。

供養の対象となる石は、人々の思い、慈しみを受けながら、さらに美しさを増していきます。そこに眠る人、そこに参る人、そこに集う人の心と、周囲の自然環境、景観にも充分に配慮された、素晴らしい墓地の誕生が楽しみですね!


SDレビュー2025休憩所。周囲の景色になじむゆるやかな屋根
©Hamed Sékou Touré

SDレビュー2025休憩所内。水琴窟のやさしい響きに包まれる(予定)
©Hamed Sékou Touré

SDレビュー2025展示風景(伊達冠石の循環イメージ)
©Hamed Sékou Touré

SDレビュー2025展示風景
©Hamed Sékou Touré

SDレビュー2025多くの注目を集めた「還る墓」
©Hamed Sékou Touré



・小野直輝(おのなおき)
1992年静岡県生まれ。東京藝術大学大学院修了。石上純也建築設計事務所を経て、2024年Ono Studio設立




なお、10月3日(金)から25日(土)までは京都展が開催されます。下記ご確認のうえ、ぜひご来場ください。


●SDレビュー2025 京都展
第43回建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展
会期:2025年10月3日(金)~25日(土)
時間:10時~17時 *入館は16時30分まで
休館日:日曜日・祝日および10月18日(土)
公開プレゼンテーション:10月4日(土)
会場:京都工芸繊維大学美術工芸資料館
住所:京都市左京区松ヶ崎橋上町
https://www.museum.kit.ac.jp/
主催:鹿島出版会
公式ウェブサイト:https://kajima-publishing.co.jp/sdreview/