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石棺などを作っていた一族が創建~石作神社(岐阜県羽島郡岐南町)

石作神社

 

 岐阜県羽島郡岐南町に石作(いしつくり)神社があります。主祭神は建真利根命(たけまりねのみこと)です。

 岐阜県神社庁ウェブサイトでは、同神社の創建について、次のように説明されています。


 第60代醍醐天皇の延喜年間に着手され、延長5年(927)に完成した。延喜式の神名帳に石作神社が6社記載されており、そのうち4社が尾張地方御鎮座になっている。建眞利根命は、天照大神の御ん孫天火明命の6世の子孫である。第11代垂仁天皇の皇后日葉酢媛命のため石棺を作って献上し、大連公の姓を賜った。石作大連公は建眞利根命の子孫である。石作氏一族は石作りを業とし、各地で活動する大氏族となり、祖先をお祀りする石作神社を創建した。式内社が尾張地方に4社もあることは石作氏一族の繁栄を示している。

 つまり、石棺などを作っていた一族である石作氏がご先祖様である建眞利根命をお祀りするために、石作神社を創建したということです。

 

 石作連(いしづくりのむらじ)、石作神社については、日本石材史編纂委員会編『日本石材史』に、次のように記載されています(図版、筆者挿入)。


(前略)石棺について見れば、例えば家形石棺なら家形石棺の規定とも言うべきものがあって、同じ種類のものは大体相似た形に作られていて、決してそれらが素人によって思い思いに勝手に作られたものと思われないことは、そこに職業的な石棺製作の工人の存在したことを思わせるのである。
 この事実に対して注意に上るのは、『古事記』中巻、垂仁天皇御代に「又其大后比婆須比賣命の時。定石祝作。又定土師部。」とあることで、ここに見る石祝作は、本居宣長がその師加茂真淵の意見として、祝は棺の字の草書から誤り書き写されたもので、即ちこの記事は、垂仁天皇の皇后比婆須比賣命(ひばすいひめのみこと)が崩じられた時、石棺作と埴輪を製作する土師部(はじべ)を定められたことを言うものである。果たしてこの時に石棺作の職業部が設けられたか否かは、この記事だけでは信じられぬとしても、先に述べた通り、石棺製作の職業的工人の存在したことが遺物の上から考えられるのとあわせて、古くから石棺作の技術労働者の品部(ともべ)のあったことは事実である。
 『新撰姓氏録』の石作連(いしづくりのむらじ)の条に、垂仁天皇御世に皇后日葉酢媛命のために石棺を作って献じたことによって、石作連公の姓を賜ったことを記すのも同じ古い伝えによるもので、この石棺作の職業的品部を石作部と称し、石作連はその首長的な家であったと思われる。

新訂増補 国史大系『交替式・弘仁式・延喜式 前篇』(吉川弘文館)より

 石作連の部族は恐らく全国に散在したことと思われるが、その一々については詳らかではない。時代は降るが正倉院文書大寶二年(七〇二)十一月の『御野國味蜂間郡春部里戸籍』に石作部目賣(女)、石作刀自賣(女)、石作部小麻呂(男)が見え、同じく正倉院文書天平七年(七三五)頃の大隅國計帳と思われているものの中に、石作連族綿賣(女)の見えるのなどがその僅かの例である。
 また石作の地名や石作神社の古く鎮座したところも石作部居住に関係あるものと見るべく、『延喜式』神名帳には次の六ヶ所の石作神社が載せられている。山城國乙訓郡石作神社は石作郷にあったもので、現在の大原野村に当たり、神社は大歳神社に合祀されている。尾張國中嶋郡石作神社は美濃國羽島郡に入った土地であり、尾張國葉栗郡と丹羽郡・山田郡にも石作神社が在し、山田郡石作郷は今の愛知郡岩作村付近と考えられている。近江國伊香郡石作神社は現在木之本千田に鎮座する。

佐伯有清著『新撰姓氏録の研究 本文篇』(吉川弘文館)より

 『播磨風土記』には宍禾郡に石作里を記し、本名伊和郷を石作首などが此村に居ったので石作里と名づけたとし、その地は明かでないが、今の穴粟郡で、穴粟川の上流地方であったらしい。
 やがて時代は進んで飛鳥時代になると、大陸から仏教文化が伝えられ、仏寺建築の石壇や礎石、さては石塔などの製作が石作部の工人たちの新しい活動分野となったのである。仏教文化の移入は、石材史の上に従来にない大きい飛躍を見せるのであるが、その工作の根底に古くから我国で育てられて来た工人たちの技術の流れのあったことを忘れてはならない。


 上記文中の「尾張國葉栗郡」にある石作神社が、ここで紹介する石作神社に当たります。その他の石作神社も参拝する機会をつくり、紹介していきたいと思います。

◎石作神社
所在地= 岐阜県羽島郡岐南町三宅9-120
http://www.gifu-jinjacho.jp/syosai.php?shrno=125

 

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