現場レポート
東京・入船のhino gallery「丸山富之 彫刻竹取物語」は10月12日まで!
会場風景
彫刻家・丸山富之氏の個展「丸山富之 彫刻竹取物語」が2024年9月21日(土)から10月12日(土)まで東京都中央区入船のhino galleryで開催されています。
丸山氏は1956年長野県生まれ。84年東京藝術大学彫刻科卒業、86年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。国内外で多数の個展、グループ展参加などご活躍中です。特に「諫早石」(長崎県諫早市産、砂岩)を使用して彫刻作品を制作されています。
作品「始原」砂岩、杉、2024
作品「地空」砂岩、杉、2024
作品「地空」砂岩、2024
hino galleryでの個展は96年から開催されていて、今回は14回目。砂岩(諫早石)による作品14点と、河津青石による作品1点が出展されています。
丸山氏は近年、垂直・水平へと拡がる表現を探求され、とても繊細で研ぎ澄まされた緊張感のある彫刻をつくられていますが、今回は「彫刻竹取物語」と題して、これまでの天空と大地(垂直・水平)との関係性からさらに踏み込み、天と地を結ぶ果てしなく茫然とした空間へ目を向け、同じく果てしない時を経て生まれた石を介在し新たな形を生み出しています。
〈竹は地と空を結んで呼吸する
地、新しいものの生まれるところ
空、新しいものの生まれるところ
竹の中の空洞、新しいものの生まれるところ
新しいものはよくわからないものとしてある
そのものは重力の中で動き回る
そのものは地平で育ち自ら立ち上がる
そのものは完全に成長する前で(例えば石が像に変わる少し前で)その成長を止める
そのものはこのものに変わる
そして空に帰っていく〉・・・丸山富之「彫刻竹取物語」に寄せて
展示は、これまでの丸山氏の視点を踏襲するような作品群と、それとはまるで違う、生まれたての柔肌を湛えるような作品群の二段構成に思えます。
会場風景
作品「おもかげ四」砂岩、鉄、2024
作品・同上、石割用の矢
作品「おもかげ三」砂岩、2024
作品・同上、背面の表情
左:作品「おもかげ五」砂岩、2024
右:作品「おもかげ六」砂岩、鉄、2024
作品「おもかげ一」砂岩、2024
作品「おもかげ七」砂岩、鉄、2024
左:作品「始原」(右)と「遡行」ともに砂岩、桂、2024
右:右は作品「地」河津青石、2024 / 他は作品「地空」砂岩、桂、2024
「作品に対して、どうしてその形になったかとよく聞かれるが、最初から理由など何もなく、石という素材との対話のなかから自然と生まれてきたもの。石彫は特に作者の手の痕跡が残るものだが、それだけでは何も評価されないのが彫刻の本質だと思う」
丸山氏は石文社「月刊石材」2024年4月号掲載の「石彫の未来へ~美大・芸大の現場から 武蔵野美術大学編」のなかでそう語っています。
きっとその石との対話には、濃密な時間軸が存在しているのであろうと、その作品群からは感じられます。同時に、決して急かされることのない安心さに、この心が満たされていくような心地よさを感じます。
ぜひ会場でご覧ください。
参考までに、昨年1月のいりや画廊での個展「水平の空-おもかげ」もご覧ください。
●丸山富之 彫刻竹取物語
会期:2024年9月21日(土)~10月12日(土) *日・祝(9/23)は休廊
時間:11時~18時 *土曜日は17時まで
会場:hino gallery
住所:東京都中央区入船2-4-3 マスダビル1F
http://www.hinogallery.com/