墓を訪ねて三千里

墓マイラーであるカジポン・マルコ・残月さんによる世界墓巡礼のレポートです。

ジャマイカ大疾走! “レゲエの神様”ボブ・マーリィ巡礼

2020.11.11

海外

ボブ・マーリィ
ボブが眠っている霊廟。残念ながら内部は撮影禁止。画像の窓の背後に石棺がある

 

夏は明るい太陽の下、各地で野外音楽フェスティバルが開催される。人気を集めているのはカリブ海・ジャマイカで生まれたレゲエ音楽。「レゲエ」の語源はジャマイカ語の“レゲレゲ”(抗議する)で、元々は貧困や飢えに対する民衆の抵抗音楽だ。

それを世界に広めたのが36歳で早逝したボブ・マーリィ。

2001年夏、僕は墓参のためにジャマイカへ向かった。同国は政情不安定で、直前にも首都で暴動や銃撃戦が起きていたけれど、ボブに対する敬慕の念が年々つのり、これ以上墓参を先延ばしには出来なかった。

大阪→成田→アトランタ→マイアミ→ジャマイカと乗り継ぎ、夜半に入国。宿の送迎車で、ボブの出生地であり彼が眠っているナイン・マイルズ村のことを尋ねた。運転手の話では、村の博物館に墓があり、車で片道3時間、タクシー代は200ドルが相場とのこと。そして「バスなら安く行けるけど、強盗が多いし行き先は天国かも。途中の山は今でも山賊が出る」とも。うおお…。

翌朝6時半に行動開始。悪党は11時頃まで爆睡しているので、治安の悪い土地では正午までに主な活動を終え、夕方以降は出歩かないことが生存の鉄則だ。僕が交渉したタクシーの運転手はスキンヘッドのマッチョな黒人で、とにかく押しが強かった。まだ値段交渉中なのにトランクを開けて荷物を入れ、「200ドルでいいな」。僕は「宿屋の主人が150ドルで行けると言っていた」とハッタリをかました。「村へ続く山道はデコボコで危険。190ドル」。負けてられない。「帰りは僕が運転する。あなたは後部座席で寝てればいい」。

彼は大笑いした後、真顔になって「180ドル以下は無理だ。俺は元ボクサー。山賊襲撃のボディガード代込みの180ドルと思ってくれ」。握手。僕らは出発した。 

彼の名前はウィリアムズ(43歳)。子供は5人、愛人は2人。空は快晴。気温は32℃。窓から心地良い風が入る。ときおり道を阻むのは牛やマングース。ウィリアムズはムキムキだけど、つぶらな瞳で笑顔が人懐っこく、温かいオーラに包まれていた…。他の車に追い越されぬ限りは!

世界最速のタクシー・ドライバーを目指す彼は、他車に追い抜かれると奇声をあげて抜き返す。客を乗せているのに! カーブの向こうが断崖絶壁でも関係なし。パリ・ダカール・ラリーに出場すれば間違いなくチャンピオンだ。

悪路を突っ走ること2時間半、何とか墓前に到着。僕は両手を広げ、高さ2メートル、奥行き5メートルの巨大な石棺に抱きついた。そして素晴らしい音楽を残してくれたことに感謝した。

墓所を出ると“葉っぱ”の売人が数人待ち構えていた。「吸うか?」とウィリアムズが聞くので、僕が手錠をかけられる真似をすると「ガハハ、その通り」。彼は笑いながら追い払ってくれた。最後にちょっぴりボディガード。これも忘れ得ぬ巡礼となった。

 

ボブ・マーリィ
僕が生命を預けたウィリアムズ


※『月刊石材』2011年8月号より転載

カジポンさん

カジポン・マルコ・残月(ざんげつ)

1967年生。大阪出身。文芸研究家にして“墓マイラー”の名付け親。
歴史上の偉人に感謝の言葉を伝えるため、
30年にわたって巡礼を敢行。2,520人に墓参し、
訪問国は五大陸100ヵ国に及ぶ。
巡礼した全ての墓を掲載したHP『文芸ジャンキー・パラダイス』
http://kajipon.com) は累計7,000万件のアクセス数。

 

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