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「庵治石」の誕生とその謎に迫る! ―「街角地質学者」こと名古屋市科学館主任学芸員・西本昌司氏に聞く

2021.01.20

西本昌司さん

 

――本日は、理学博士である西本さんから「庵治石」について学術的(岩石学・地質学)なお話をいろいろと伺いたいと思います。まず岩石とはどういうものか、そこからご説明願います。

西本主任学芸員(以下、西本氏)
 岩石をひと言で説明すると「鉱物の集合体」です。私たちが入手できる岩石のほとんどは、地球の表層にある地殻(深さ約6~40キロメートルまで)あるいは上部マントル(地殻の下から深さ約660キロメートルまで)でできたものです。

 たとえば、花崗岩は、石英やカリ長石、斜長石、黒雲母など、複数の鉱物の粒子で構成されています。岩石の見た目や性質は産出地や生成環境などによって異なります。それは構成鉱物の種類と割合が異なるからで、有色鉱物(黒雲母、角閃石、輝石、カンラン石)が多くなると黒っぽく見えるのです。

 では鉱物は何かというと「原子の集合体」で、たとえば石英を化学式で表すとSiO2となります。多くの鉱物にはSi(ケイ素)とO(酸素)が含まれています。

名古屋市科学館の生命館で展示している岩石の標本(左上が花崗岩)。リアル感を演出するため、実際にボーリングで採取した岩石の輪切りにしたものを展示している


――「庵治石」は石材名、「花崗岩」が岩石名ということですが、岩石の分類で花崗岩はどのような位置づけになりますか?


西本氏
 岩石は、マグマが固まってできた「火成岩」、何らかの粒子が降り積もったり、沈殿したりしてできた「堆積岩」、そして火成岩や堆積岩が熱や圧力などの変成作用を受けて、融けずに鉱物の種類や組織が変化した「変成岩」の3つに大別できます。

 このうち火成岩は、さらに、地下深部にあったマグマだまりがゆっくり時間をかけて固まった「深成岩」、マグマが地表または地表近くで固まった「火山岩」に大別されます。

 また火成岩を構成する主な鉱物は、石英、カリ長石、斜長石、黒雲母、角閃石、輝石、カンラン石の7種類ですが、その割合によって、淡い色の無色鉱物(石英、カリ長石、斜長石)が多いものを「珪長質」、有色鉱物が多い(鉄やマグネシウムも多い)ものを「苦鉄質」と呼び分けます。

 深成岩はその珪長質から苦鉄質に近づくに従って「花崗岩」「花崗閃緑岩」「閃緑岩」「斑レイ岩」「カンラン岩」などに分類されますので、カリ長石の多い花崗岩は「深成岩のなかで無色鉱物の割合が多い岩石」といえます。

 なお鉱物の大きさ(粒径)に応じて、石材名に糠目や細目、中目、荒目などの名称を付けたりしますが、岩石上の区分とは必ずしも一致しません。岩石学では、およその区分として1ミリ未満を細粒、1ミリ以上5ミリ未満を中粒、5ミリ以上を粗粒としています。

 以上を踏まえて庵治石(細目)を正式な岩石名にすると「細粒黒雲母花崗岩」となります。


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