いしずえ

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新素材研究所「ロンドンギャラリー六本木」

2020.11.11

建築・造園・石垣



ロンドンギャラリー六本木
London Gallery Roppongi
2011年
東京都港区

新素材研究所 / 杉本博司+榊田倫之

日本のみならず世界中のアートが集積する街、東京・六本木。地下鉄の駅からすぐの場にピラミッドを模した建築が印象的なピラミデビルがある。六軒のギャラリーが入居する六本木を代表するアートスポットのひとつで、そのうちの一軒、「ロンドンギャラリー六本木」の内装デザインを新素材研究所が手がけた。

日本や中国、韓国など東洋の古美術、特に仏教美術品を専門に扱うギャラリーにふさわしく、しっとりと落ち着いた空間を見事につくり出している。

正面ショーウィンドウ(床板:屋久杉無垢材)と水鉢(五輪塔地輪、四方仏、鎌倉時代)の景色。柱は栗材穂掛け柱(光学硝子の礎石)


エントランスにさりげなく置いた瑞々しく苔むした水鉢は鎌倉時代五輪塔地輪(四方仏)の転用で、来訪者をひといきに静謐な世界へとひき込む。低温で焼成し、手作業でやわらかなむくりを生ませた黒っぽい敷瓦を四半敷きに据えた床の質感は、思う以上に足もとに優しい。何より、白壁とのコントラストが静けさをよりきわ立たせている。

客間の引き戸(へぎ板引き戸)をあけて、エントランスに置かれた水鉢をのぞむ。手前の床柱の礎石や縦桟は光学硝子。客間は現在、テーブルなどの調度品を整えて使用されている


内部へと歩を進めるほどにその世界観はさらに趣きを増してゆき、最奥の客間はまさしく至上の空間。だが、それをここで稚拙な言葉で再現しようと試みるのはあまりに無粋であろう。
なお、新素材研究所は「ロンドンギャラリー白金」も手がけていて(2009年)、それらでの意匠や工法はその後の美術館等の設計にもつながる。


All photos: (c) Hiroshi Sugimoto / Courtesy of New Material Research Laboratory


*「月刊石材」2019年4月号より転載
内容は同号掲載当時のものです


◇ロンドンギャラリー六本木
London Gallery Roppongi
用途:古美術ギャラリー
建主:ロンドンギャラリー㈱
延床面積:136㎡
施工:水澤工務店

株式会社新素材研究所
https://shinsoken.jp