いしずえ
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群馬県石工技能士会「のみ焼き講習会」を初開催。群馬県伊勢崎市で(2025年2月)
群馬県石工技能士会 「のみ焼き講習会」を初開催
群馬県石工技能士会の「のみ焼き講習会」に参加された皆さん
「のみ焼き講習会」のようす。会員以外の参加者もおり、総勢28名が参加した
各自が現在使用している道具を持参。焼き入れ後には、のみの仕上がり具合を石を斫って確認する参加者もいた
群馬県石工技能士会(齋木三男会長)は2025年2月12日、同会で副会長を務める中村貞三郎氏の中村石材店工場(群馬県伊勢崎市)において、株式会社山口石材(長野県松本市)の専務取締役である山口隆徳氏を講師に招き、「のみ焼き講習会」を開催した。参加者は会員だけではなく、群馬県石材商組合の会員など総勢28名。同講習会の開催は初めてだったが、多数が参加した。
齋木会長は今回の講習会について、次のように話す。
「技能士会として、これまでしっかりした活動がなされていなかったので、役員の間で、『技能士の看板を活かせるような活動を何かしら始めよう』ということになりました。会員からも『役員に一任するから何かしてほしい』という声をいただきましたので、石屋として基本中の基本というか、忘れさられている『のみ焼き』を共有しようということになりました」
齋木会長は昨年(2024年)4月に群馬県石工技能士会の会長に就任。役員は現在5名で、会員は32名。1981年4月に設立し、これまでの主な活動は新聞広告だったという。
講習会の冒頭、講師を務めた山口氏は「持参した道具を直して、明日から仕事で使えるようにするのが今回の目的」と参加者に説明。同氏の会社では斫り工事もしており、電動ピックをよく使うという。各職人が炉を持っており、電動ピック等の道具は定期的に焼き直しているそうだ。
当日は山口氏の指導のもと、火熾しからスタートし、午前中は道具を焼き直し、午後は焼き入れを行なった。
炉にコークスを入れ、火のつけ方から説明する山口氏
講習会には、中村副会長の中村石材店が出入りをしているという天台宗善應寺の小川晃龍住職も訪れ、講習会を見学。感想を伺うと次のように話してくれた。
「原風景というのか、昔は職人さんがこのようにして道具をつくっていたんだ、ということがわかり、イマジネーションが刺激されました。群馬は古墳が多く、石棺をはじめ石でつくられたものが多いですから、1,500年、1,600年前の古代の石工さんも、同じように道具をつくって、直していたのではないか、と思い起こすことができました。機械があり、ネットがあり便利な時代ですが、自分の体を使ってものをつくることの重要性を再認識できる貴重な機会になりました」
見学に来た小川住職(左)にのみ焼きについて説明する中村副会長
【左】若い参加者も熱心にのみ焼きを行なった【右】自作したバールの使い勝手を試す
道具の焼き入れ後には、自作したバールの使い勝手を試したり、のみの仕上がり具合を石を斫って確認する参加者もいた。講習会の閉会に際し、「炉とコークスがあれば、自分で道具を直すことができる。道具には愛着がわくと思うので、長く使ってほしい」と山口氏。齋木会長に講習会の感想を聞くと、「今回を機に、ものづくりを共有できる人が集まり、次のステップへ行けるのではないか。毎年、何かしら違うことを企画して、楽しみながら技術を継承しながら、高みを目指していく会にしていきたい」と話してくれた。
群馬県石工技能士会の今後の企画、活動が楽しみだ。
群馬県石工技能士会の役員の皆さん(右から3番目が齋木会長)と、講師を務めた山口氏(左から3番目)
※『月刊石材』2025年3月号(3月15日発行)より、一部変更して転載