いしずえ

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「北沢の大石棒」の模刻を建立 長野県産佐久石(株式会社萩原・採掘)を使用

2025.02.15

その他

「北沢の大石棒」の模刻を建立 
長野県産佐久石(株式会社萩原・採掘)を使用

除幕のようす。大石棒の模刻を挟んで、右側が所有者の倉澤治貴氏、左側が佐々木勝佐久穂町長


「北沢の大石棒」の模刻(レプリカ)建立記念式典が2024年11月10日、同石棒が立っていた場所で開催されました。式典を主催したのは長野県佐久穂町で、佐々木勝町長をはじめ、大石棒所有者である倉澤治貴氏や佐久考古学学会の藤森英⼆会長など、関係者が多数出席しました。


式辞を読む佐々木町長(左)と挨拶する倉澤氏。式典参加者の皆さんで記念撮影


 北沢の大石棒は大正時代に佐久穂町北沢川改修工事の際に発見され、いまから5,000年ほど前、縄文時代中期につくられたと推定される遺物です。発見後は近くに立てられ、1984年には安全対策として根元をコンクリートで補強。同年に町有形文化財に指定されていました。

 石棒の長さは2.23mと国内最大級。考古学ファンの注目を集めてきましたが、ここ数年は風雪による劣化が懸念されていました。そこで佐久穂町教育委員会が「室内保存が必要」と2022年11月に現地から運び出し、その後レプリカを制作するとともに、2023年11月からは佐久穂町生涯学習館「花の郷・茂来館」で、実物とレプリカを並べて展示していました。

 レプリカは、長野県佐久地方で採掘されている佐久石(溶結凝灰岩)製。佐久石は現在、株式会社萩原(萩原孝明社長)のみが採掘しており、同社は石の提供をはじめ、実物の掘り出しから「花の郷・茂来館」への運び出し、2024年10月末にはレプリカの設置も行ないました(レプリカの制作は、東京都在住で文化財修復家である及川崇さんが担当。株式会社萩原は作業場の提供も行ないました。『月刊石材』2023年12月号参照)。


【左・中】レプリカの設置のようす【右】レプリカを「花の郷・茂来館」から運び出すようす。
写真提供:株式会社萩原


【左】萩原社長(左)と、大石棒のレプリカ制作にあたって「佐久石を提供してほしい」と萩原社長に相談した明治大学黒耀石研究センター(長野県長和町)特任教授で日本旧石器学会会長の堤隆先生。レプリカ横の石は、実物の傍に置かれていた石で今回、一緒に立てた【右】レプリカ設置のようす。写真提供:株式会社萩原


 式典で挨拶に立った大石棒所有者の倉澤氏は「とても嬉しい。新しい石棒は弟分。これまで兄貴が味わった自然環境を今後、何百年、何千年と担っていく。頑張ってほしい。大石棒を多くの方々に見ていただき、佐久穂町の街おこし、地域おこしになれば」と述べました。

【左】記念式典後の現地の風景【中】「花の郷・茂来館」に展示されている実物の大石棒。写真提供:佐久穂町教育委員会【右】㈱萩原の作業場にて完成したレプリカ(左)と実物。2023年10月編集部撮影


 なお実物は、引き続き「花の郷・茂来館」に展示されています(入場、見学無料)。

記念式典に出席した株式会社萩原の萩原裕明専務

 

◎佐久穂町生涯学習館「花の郷・茂来館」
長野県南佐久郡佐久穂町海瀬2570
https://www.town.sakuho.nagano.jp/shisetsu/moraikan.html

◎株式会社萩原
長野県佐久市内山7146
TEL0267-62-8691