いしずえ

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新素材研究所「究竟頂 / 茶洒 金田中」

2020.11.11

建築・造園・石垣



究竟頂 / 茶洒 金田中
Kukkyocho / Sahsya Kanetanaka
2013年
東京都港区

新素材研究所 / 杉本博司+榊田倫之

高級ブランドの旗艦店が軒を連ねる東京・表参道。もとは明治神宮の参道として整備された大通りだが、いまや数々のショップが通りを彩り、ハイエンドの街として、また若者の文化や流行の発信地として世界中から注目を集めている。

その表参道に2013年、オーク表参道が開業した。エンポリオ・アルマーニ、グッチといったハイブランドが入居する複合商業施設で、そのエントランスホール“究竟頂(くっきょうちょう)”と二階の和カフェ“茶洒 金田中(サーシャ カネタナカ)”は新素材研究所の仕事である。

“究竟頂”(上写真)の空間はまさに圧巻である。厚さ約25センチ、大きなもので2トン、総重量500トンもの花崗岩を両側の壁全面にリズミカルに、荒々しく配したホールは古代の石室を思わせる。奥の天井には数学上の双曲線関数を模型化した“数理模型”が地に向けて吊られている。全長6メートル、先端部の細さは五ミリの造形で、そのデザインは“無限をここで見よう”という試みだという。また“究竟頂”とは金閣寺の最上層部の名で、“究極の極楽浄土”の意らしい。そんな複数の要素が重なり合い、時に侵食し合って構成されているこの空間の無言の迫力たるや。

和のカフェ「茶洒 金田中」の店内と苔庭。客席には無垢材の巨大カウンターが2列設けられ、庭を眺めながらゆっくりとお茶や食事を愉しむ。庭は黒文字垣で仕切り、鉄平石を組む。軒下には敷瓦を四半敷きに据える

苔庭の鉄平石の石組み中央左側には洞窟のような祠を設け、そこに2基の五輪塔を彫った板碑(鎌倉時代)を磨崖仏に見立てて置く。五輪塔は宇宙の五大要素である地・水・火・風・空をその形に表現している


薄暗いホールの最奥部、光の中に階段が現れ、そこを上がると“茶洒 金田中”の店舗へ。白を基調とした客席からの眺めは苔庭で、苔の海に浮かぶ絶海の孤島を連想して乱積みした鉄平石が眼前に迫り、都会の喧騒を消す。客席は他の視界を遮断するような設えで、来店者にいやおうなく庭の景色を見させる仕掛けが面白い。奥の個室からは〝究竟頂〟を上部から俯瞰でき、空間の連なりを知る。

※“茶洒 金田中”が饗するお食事、お菓子も絶品!


All photos: (c) Hiroshi Sugimoto / Courtesy of New Material Research Laboratory


*「月刊石材」2019年5月号より転載
内容は同号掲載当時のものです


◇究竟頂 / 茶洒 金田中
Kukkyocho / Sahsya Kanetanaka
用途:複合ビルエントランス空間 / 飲食店
建主:大林不動産 / 銀座金田中
延床面積:究竟頂172㎡ / 茶洒 金田中160㎡
施工:大林組
使用石材:究竟頂=中国・青島産花崗岩
茶洒 金田中=鉄平石、五輪塔板碑(鎌倉時代)

株式会社新素材研究所
https://shinsoken.jp