いしずえ

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金鈴塚古墳(国重要文化財)の箱式石棺に「矢穴」の痕跡を新たに発見!(千葉県木更津市)

2021.04.02

お墓・石塔

金鈴塚古墳箱式石棺


 千葉県木更津市が金鈴塚古墳(きんれいづかこふん。国重要文化財)の出土品である箱式石棺(緑泥片岩製)について調べていたところ、石割用に加工した「矢穴」の痕跡が新たに発見され話題になっています。

 市内長須賀地区にある同古墳は、古墳時代後期の6世紀末頃につくられた全長90mほどの前方後円墳で、後円部の一部と横穴式石室が保存されています。箱式石棺はその石室内に置かれていたもので、長さ237×幅94×高さ85ミリ(推定1.21トン)。同市がこれら石室と石棺の3D図作成に必要な調査を実施したところ、石棺から複数の矢穴痕(加工痕A)が発見されたのです。

 凹凸状の石の表面を手斧(ちょうな)のような工具で平坦に加工した痕跡(加工痕C)も見つかり、1950(昭和25)年の発掘調査で分からなかったことが、今回の最新技術(三次元形状復元技術)を用いた調査によって明らかになりました。

金鈴塚古墳箱式石棺の石材加工痕(三次元計測画像)

金鈴塚古墳箱式石棺の石材加工痕トレース図


 同市によると、石割方法には、膨らみを持つ矢の胴部から矢穴側面に圧力を加えて石材を割る「矢穴技法」と、クサビ状工具の刃先が矢穴底部を直接割り込んで石材を割る「矢割技術」の2種類があり、日本における矢穴技法の明確な事例は12世紀末頃とされるため、この箱式石棺の矢穴の痕跡は矢割技術に伴うものと考えられるそうです。

 また緑泥片岩製の石棺で石割の痕跡が明らかになったのは同古墳が初めてのことで、日本の石材加工技術史を考えるうえで非常に重要な手がかりになるということです。

 國學院大學名誉教授で、木更津市史編集委員会委員長の杉山林継氏は、「北武蔵の地から、これらの石材がどのように運ばれてきたのか、そこにはどのような人々が関係していたのか、研究が進めば興味深い」とコメントしています。

 なお、金鈴塚古墳は現在、危険防止のため古墳内に立ち入ることはできません。また出土品を収蔵・展示している郷土博物館金のすずは改修工事のため休館中となっています(令和3年度中に開館する予定)。


※画像提供:木更津市教育委員会


◎金鈴塚古墳
千葉県木更津市長須賀430-1
本件のお問い合わせ先=TEL0438-23-5309(木更津市教育委員会 教育部文化課)