特別企画

お墓や石について、さまざまな声をお届けします。

癒しの空間として、作品は道祖神みたいにどんどん置きたい―彫刻家 田中毅

2021.09.16


彫刻家・田中毅作品「うんとんちゃん」黒みかげ
(うんとん処 春夏秋冬、川越市)



●インタビュー/「月刊石材」2016年8月号掲載
癒しの空間として、
作品は道祖神みたいにどんどん置きたい
彫刻家 田中毅

毎年必ずどこかで、それも複数の会場で展覧会(個展)が開催される彫刻家・田中毅さん。会場にはいつも観覧者(ファン)がたえず、皆さん「かわいらしいね」「愛嬌たっぷり!(でもなんかこにくらしい!笑)」「誰かに似てるよね(あ、田中毅さんご本人かな!?)」「虫? 妖精? 動物かな?(う~ん、でも6本足の生き物はないかも!)」なんてことを思いながら、作品に触れ、話しかけたり撫でたりしては、にんまり笑顔。そんな皆さんの反応を見て、田中さんも大抵にんまりしています。
「月刊石材」2016年8月号では、田中毅さんに作品づくりや石についてなどのお話を聞きました。その内容を、新たに最近(2020~21年)の展覧会での作品写真なども入れて転載します。やさしく、おおらかなお人柄がにじみでている楽しいお話です。コロナ禍に笑顔になれますように!



――個展などで作品を拝見していますが、かわいかったり小生意気に見えたりして、勝手にニヤニヤしています(笑)。今日はアトリエにお邪魔しました。ここでつくられているんですね。
田中毅(以下、田中) もともとのアトリエは別にあって、ここは5年くらい前からかな(*2016年当時)。複数の作家の共同アトリエとしてつくられたときに「来てくれ」って頼まれて(笑)。

他に仕事や用事がなければだいたい毎日、朝は9時くらいから、夕方6時くらいまでここにいます。昼は弁当を持って来て、それを食べてから1時まではちゃんと昼寝して(笑)。だから誰かが昼に来ても、勝手に寝かせてもらうから申し訳ないんです。

――それにしても今年は特に展覧会で大忙しですね(*今年とは2016年のことですが、田中さんは毎年、個展、グループ展等でお忙しい!)。
田中 数年おきの個展がたまたま重なったのと、断りきれないのと(笑)。忙しいのはあまり好きじゃないんだけど、東京での個展が重なるとやっぱり来場者がかぶるから、ちょっと新作もつくらないと(笑)。

――目黒の展覧会(*宗教法人長泉院附属現代彫刻美術館での「田中毅石彫展」、会期:2016年4月23日~6月19日)には約80点もの作品が出ましたね。
田中 普通は多くて30~40点だから、やっぱり多いですね。美術館の学芸員さんがいろいろと考えて、ほとんどの作品を飾っていただきました。年代順というか、若いころの作品も展示してくれたんです。

――学芸員の方が「こんなに並ぶと、田中さんも恥ずかしいはず」といっていました(笑)
田中 うん、それはやっぱり恥ずかしい(笑)。

なんか、人間は隠している部分が少しはあってもいいと思うんだけど、全部さらしているみたいでね(笑)。それと来場者も見飽きちゃうんじゃないかなと。それで会場にボクがいたら、飽きてても見てるふりをしなくちゃいけないでしょう。悪いなあって(笑)。


彫刻家・田中毅2016年4月23日から6月19日まで東京・目黒の宗教法人長泉院附属現代彫刻美術館で開かれた「田中毅石彫展」(第17回現代彫刻美術館特別展示)では、彫刻、リトグラフあわせて約80点もの作品が展示された。田中毅さんが20代で彫った彫刻から近作・新作までが集まり、田中さん曰く「これだけ作品が揃うと、自分のなかにある全部をさらしているようでちょっと恥ずかしい思いもする(笑)」。見ごたえ充分の大展覧会となった

彫刻家・田中毅屋外にも多数の作品が並んだ

彫刻家・田中毅作品「唄おう」/ 作品「風のうた」
黒みかげ

彫刻家・田中毅作品「揺れる眼差し」シリーズとリトグラフ
黒みかげ、
名栗石

彫刻家・田中毅左写真:作品「翔ぶよ」
右写真:
作品「笑っていこう」/ 作品「まねきガメ」
黒みかげ

彫刻家・田中毅作品「道化虫」/ 作品「急がば回れ」
黒みかげ


彫刻家・田中毅作品「がきんちょ」/ 作品「目のまわる子」
「がきんちょ」は1981年、田中さん30歳のときの作品で安山岩。「目のまわる子」は黒みかげ

彫刻家・田中毅作品「周遊犬‐獅子犬‐」/ 作品「カブトグモ」
黒みかげ