特別企画

お墓や石について、さまざまな声をお届けします。

癒しの空間として、作品は道祖神みたいにどんどん置きたい―彫刻家 田中毅

2021.09.16


彫刻家・田中毅埼玉県川越市の弁天横丁にある喜多町弁天長屋で2021年9月9日から19日まで開催された「田中毅石彫展」。この喜多町弁天長屋は明治期に建てられたもので、2021年夏、NPO法人川越蔵の会による保存・再生・活用プロジェクトで息を吹き返した建物。展覧会では、その1階のギャラリースペースに多数の彫刻作品と、版画、オリジナルグッズ等が並んだ。歴史ある弁天横丁の景観と、古民家風で趣きのある喜多町弁天長屋の内装に田中毅さんの作品たちがとけ込んだ



石の強さ、深みを感じながら、
石のなかにあるカタチを引き出す

――作品づくりは原則、すべて手加工なんですね。
田中 うん、あまり機械は好きじゃないですね、ラジオが聴こえなくて(笑)。

荒取りはほとんどコヤスケで、ノミで彫り、磨きは手磨きが基本です。前に手磨きの工程は石材新聞(石の産地・愛知県岡崎市に本社のある石材工業新聞)に載ったみたいだから、省略しましょうか(笑)。

――はい、気になるのはラジオですね(笑)。なにを聴きながらつくるんでしょう?
田中 時期にもよるけど、やっぱり相撲は聴きたいですね(笑)。

平日ならほとんど文化放送。土曜日はいろいろと変わるけど、NKHで落語とか、漫談とか。久米宏さんの番組が好きだからTBSも聴くし、音楽を聴いたりしてつくってます(笑)。最初に毎日といったけど、日曜日は畑仕事が多くて、アトリエに来ないときがあります。家内が畑を借りてるんだけど、耕したり、草取りしたり、力仕事はボクの仕事。植え付けたり、収穫したり、楽しいところがカミさんの仕事(笑)。

――ワハハ、おもしろいですね(笑)。最後に田中さんにとって石とはどんなものですか?
田中 石、うーんなんだろう。

やっぱり何億年とか、そういう長い時間を経ているから、石自体が強さとか深みを持っていて、それはとても感じます。そしてその強さや深みを感じながら、自分なりに加工できるところがおもしろいところかな。

石の持っているものを引き出す。かっこよくいえば、石のなかにあるカタチを、「石がこういうカタチになりたかったんだ」というようなカタチを、引き出せたらいいなと思いながら彫っています。

――今回は楽しいお話をありがとうございました。


彫刻家・田中毅作品「六地蔵」黒みかげ
(喜多町弁天長屋、以下も)


彫刻家・田中毅作品「くらげ」シリーズ、黒みかげ

彫刻家・田中毅左写真:中央の作品「山海の風」、左「流れ者」、右「かさがきんぼ」
右写真:作品「草雲への旅」
黒みかげ

彫刻家・田中毅左写真:奥の作品「あじさい」、左「つぶちょっちょ」、右「玄武もろこし」
右写真:作品「日向菊次郎」
黒みかげ、玄武岩




出典:「月刊石材」2016年8月号
聞き手:「月刊石材」編集部 安田 寛



彫刻家・田中毅

田中毅(たなかつよし)
1951年 宮崎県生まれ
77年 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
84年 現代のユーモア(埼玉県立近代美術館)
85年 神戸具象彫刻大賞展’85(大賞)
87年 彫刻動物園(栃木県立美術館)、長野市野外彫刻展
88年 第1回現代彫刻美術館野外彫刻シンポジウム
89年 横浜彫刻展(入賞)
91年 第6回神戸具象彫刻展(招待作家、優秀賞)
94年 第6回現代日本具象彫刻展(大賞、千葉県立美術館)、第3回倉敷まちかど彫刻展(入賞)
97年 ふれあい彫刻展(宮崎県立美術館)
2000年 むし・虫・ワールド(群馬県立美術館)、第11回足立区野外彫刻コンクール(入賞)
02年 日向現代彫刻展(市民賞、日向岬グリーンパーク、宮崎県)
03年 アートタウン三好彫刻フェスタ(特選、愛知県三好町)
05年 第2回現代彫刻美術館野外彫刻選抜6人展
07年 第8回桜の森彫刻コンクール(町民賞、秋田県井川町)
15年 第26回UBEビエンナーレ〔現代日本彫刻展〕(山口県宇部市)など
*その他、個展、グループ展など多数


彫刻家・田中毅
◇アトリエ:伊佐沼公房
http://www.isanuma-kobo.com/