特別企画

お墓や石について、さまざまな声をお届けします。

作品が誰かを勇気づけ、前向きにできれば、とてもうれしい―望月正幸氏

2022.04.25


望月正幸氏インタビュー作品「動かざる」(サル)/ 作品「がんばるゾウ!」シリーズ(象)

望月正幸氏インタビュー作品「闘魂」(牛)/ 作品「障害を乗り越えて!」(馬)

望月正幸氏インタビュー左:作品「ボクの夏休み」(のこぎりクワガタとカブトムシ)
右:作品「人にやさしく」(ふくろう)

望月正幸氏インタビュー左:作品「何かいいこと…」(招き猫)
右:作品「共に生きよう!」(バッタ)

望月正幸氏インタビュー左:作品「星に願いを!」(てんとう虫)
右:作品「メイクミラクル」(龍)

*上記は作品展「GOTTU 石材アート展~あたり前のことの大切さ~」に出展された作品の一部です。各作品には正幸さんの思い(詩)が添えられていますが、ここでは省略します。ご了承ください。




石はロマン。

作品で町を活性化できたら最高!

――石を彫っていて、石から何かを感じることはありますか?
望月 石は、子どもの頃に道端で蹴って遊んだ石ころでも、自分が生まれる何万年、何億年も前から存在していて、地球の歴史を物語っているもので、本当にロマンを感じます。自分には到底わかり得ないロマンがあり、それを借りて自分が削ってカタチにして、またそれが何もなければ風化するまでずっと残っていきます。

昔の石工がつくった、山のなかにある苔むした石仏でも、人知れず、ずっとそこに残っているわけですが、誰かの信仰の対象になってきたから残っているわけです。祖父のつくった鳥居にしても、それまでは何も知らずに前を通っていたのに、そこに刻まれた祖父の名を見た途端に現実味を帯び、大きな感動を受けました。

そういうことすべてが石の持つロマンではないかと思います。うまく表現できませんが、だからこそ石でお墓をつくるのであろうと、石に触れながら感じています。

――作品を通じて伝えたいことは何ですか?
望月 いまでも思うのは、最初につくったお地蔵さんでも自分ではつくれるとは思ってなく、ただただ「挑戦する」という気持ちでした。何ができるかわからないけど、チャレンジする気持ちで石を削れば、少しずつでも石は削れていくから、1年でも2年でもかけて何かを残そうと。そして、カタチとしてできれば、石は10年、50年、100年と残っていきます。

そうしてつくったものを、祖父のつくった鳥居ではないですが、たとえばお地蔵さんを親戚の子や、そのまた子どもなどが見て、「車椅子で手の不自由なおじさんが石を削ってつくったんだよ」「へぇ、そんなおじさんがいたんだ」と話をしてくれたら、それだけでもいいんです。

そして、その子が落ち込んでいるときに自分のお地蔵さんを思い出して、「それならオレも頑張ってみよう」と思ってくれたら、それはすごくうれしい。自分自身が祖父の鳥居を見たときに全身で感じたゾワゾワするほどの感動までにはいかなくても、何かを感じ取ってくれれば、それでいいなと思います。

自分の作品が誰かを勇気づけ、前向きにできれば、とてもうれしいですね。


望月正幸氏インタビュー 作品「親父」(円空仏)
〈思い〉高い壁だと思っていた父が 同志のように寄り添って 作業しているように感じるときがある 確かにやっていることは親父と違う だけどオレは負けねぇよ でっかいハンデはあるけれど なにせ、あんたの息子だから……



――それは、まさに祖父から受け継がれた「名を残す」という、石工としての生き方に通じていると感じられますね。
望月 交通事故に遭わず、そのまま石屋になって、親父と仕事をして、結婚して、子どもができて、普通に生活できていれば、また違っていたかも知れませんが、こうなってしまったら、自分にしかできないことにチャレンジしていかなくてはと常々考えています。

いまも友人の家などに自分のつくったものを置いてもらっていますが、自分の最終的な夢としては、家々の庭先など、町のあちこちに自分のつくったものを置いていただき、他県からもそれを見に来る人で賑わって、町が元気に活性化すれば、いままでお世話になった皆さんに恩返しができて最高だなと思っています。無謀な夢といわれるかも知れませんが、もう落ちるところまで落ちたので、考えられることは、実現に向けて前向きに考えていこうと。でっかい目標ですが、実現に向けて前を見ています。

――応援しています。作品には「正」の字を刻まれているそうですが、正幸さんの作品が町中にあふれる日を楽しみにしています。貴重なお話をありがとうございました。



出典:「月刊石材」2021年12月号
聞き手:「月刊石材」編集部 安田 寛



望月正幸氏インタビュー
望月正幸(もちづきまさゆき)
1978年生まれ。望月石材店三代目を継ぐと決めていたが、17歳のときに交通事故で脊椎を損傷。現在、車椅子で石を彫刻し作品をつくる

◇望月石材店

山梨県南巨摩郡富士川町青柳町2-311-1
◇Facebook
https://www.facebook.com/masayuki.mochiduki.92

望月正幸氏インタビュー
正幸さんの彫刻作品の一部。アザラシや招き猫、ウサギ、いわとびペンギン、ふくろう、さる、そして象をモチーフにした「がんばるゾウ!」など。見る人がほっこりと、また前向きになれる作品が人気