いしずえ
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新素材研究所「和心」
和心
Washin
2019年
清春芸術村ゲストハウス(山梨県北杜市)
新素材研究所 / 杉本博司+榊田倫之
2019年春、清春芸術村ゲストハウス「和心(わしん)」が竣工した。ぐるりと四周に大きく張り出した軒と、滝根石(福島県産)の巨石を据える庭に向かって開放される土間(ギャラリー)が印象的な建物で、庭と内部空間とが見事に一体化している。
敷地入口からの眺め。巨大な屋根は米杉の板葺と銅板葺で構成。階段と石垣は相木石。屋根を支える鉄柱には奈良・十津川村で採れる川石を礎石として使う
「造園の基本は景石にある。石の見立ては建築家の仕事ではない。石に取り憑かれた石頭の人間の仕事だ」と自ら語るように、現代美術作家・杉本博司が庭づくりを仕切った。滝根石の巨石は雌雄の対に見立て、女石の窪みからは滾々と清水が湧き出る。石切場に数多ある石の中から、これも男女の出会いのように杉本自身が「阿吽の呼吸で選び出した」もの。新たに人の手を加えずに、太古からのメッセージをそのまま生かす。
外構には大蛇がとぐろを巻くように相木石(長野県産)を野面積みする他、玄関へのアプローチには水鉢に見立てた滝根石を据え、わずかにやわらかく反る石橋の古材を敷く。
建物の大半を占める土間(ギャラリー)から庭を眺める。庭の2つの景石は滝根石。凸型と凹型で陰陽の対を成し、男女の和合をイメージする。外構の石垣は相木石による野面積み。入口から奥へ向かって八岐大蛇(ヤマタノオロチ)のように大きくとぐろを巻いている
アプローチ。相木石の石積み、滝根石の水鉢、石橋の古材を敷く
庭と一体の開放的な空間
内玄関、沓脱石は丹波鞍馬石
土間(ギャラリー)の床は玄昌石の四半敷き
寝室からの眺め
ゲストハウスなので内部には台所、寝室、トイレ、浴室などを設ける。叶うことなら宿泊し、十和田石(秋田県産)を敷いた風呂で汗を流し、地元の銘酒「七賢」を片手に静かな石庭の夕景を愉しみたい。
◎清春芸術村
https://www.kiyoharu-art.com/
All photos: (c) Hiroshi Sugimoto / Courtesy of New Material Research Laboratory
*「月刊石材」2019年8月号より転載
内容は同号掲載当時のものです
◇和心
用途:ゲストハウス
所在地:清春芸術村(山梨県北杜市長坂町中丸4551他)
完成:2019年/敷地面積:800㎡
総合施工:住友林業
石工事:小林石材工業
使用石材:滝根石、相木石、十和田石、玄昌石、石橋の古材、丹波鞍馬石、奈良・十津川村の川石、他
株式会社新素材研究所
https://shinsoken.jp