いしずえ

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新素材研究所「カルティエ、時の結晶」

2020.11.11

建築・造園・石垣



カルティエ、時の結晶
Cartier, Crystallization of Time
2019年10月2日(水)ー12月16日(月)
国立新美術館 企画展示室2E [東京・六本木]

新素材研究所 / 杉本博司+榊田倫之

*展覧会「カルティエ、時の結晶」は終了しています

杉本博司と榊田倫之が主宰する新素材研究所は、東京・六本木の国立新美術館で開催中の「カルティエ、時の結晶」の会場構成を手掛けた。

展覧会は「時間」という大きなテーマを軸に、第1章「色と素材のトランスフォーメーション」、第2章「フォルムとデザイン」、第3章「ユニヴァーサルな好奇心」という3つのチャプターで構成される。石と木の持つ自然美に向き合い、それを生かした創造性を探求する新素材研究所が章ごとにそれぞれ違う空間をつくり出しているが、実はそれら会場全体は宇宙を含む壮大な時間の流れ、過去から未来への連なりを意識して創造されたものである。宇宙空間を思わせる暗闇のなかで星のようにまたたくカルティエの宝石類を見て、来場者はふと自身が見ているものの本質をつかまされる。


企画展「カルティエ、時の結晶」の会場〈第2章 フォルムとデザイン〉。採掘場から切り出したままの大谷石(栃木県産、約150×300×900ミリ)を約550本積み上げ、奇跡の石・カルティエの宝石と、素朴な凝灰岩の石肌を対峙させて壮大な時間を表現。この他、伊達冠石(宮城県産)、竜山石(兵庫県産)も使用


第2章「フォルムとデザイン」では「大谷石」(栃木県産)を圧倒的な迫力で使っている。

榊田は「宝石は奇跡の石といえる。それと素朴でありのままの大谷石を対峙させる。どちらも同じ地球から生まれた石。私たちはこの展覧会で宝石を素数化して見せることを試みた。石と石とを相対させることで時間を象徴している」と語る。

まさに強力なメッセージである。来場者はカルティエというフィルターを通して、新素材研究所が仕掛ける時空の罠にはまるようである。思えば、会場を入るとすぐ、序章「時の間」までの細長くていきなり暗くなる通路に、杉本の時を逆行して刻む大型時計(逆行時計)作品が飾られているのである。

なお、「伊達冠石」(宮城県産)と「竜山石」(兵庫県産)も会場を彩っている。

大谷石の石肌

大谷石採掘場でのモックアップ検証
(photo:Kenta Aminaka)


〈序章 時の間〉

杉本博司「逆行時計」
2018年、ミクストメディア
作家本人により逆行化され修復された1908年製造の時計
(製造:フォンタナ・チェーザレ、ミラノ)
 



photos: (c) Hiroshi Sugimoto


*「月刊石材」2019年10月号より転載
内容は同号掲載当時のものです


◇カルティエ、時の結晶
用途:展覧会会場
所在地:国立新美術館(東京・六本木)
会期:2019年10月2日㈬―12月16日㈪
延床面積:2,000㎡
協力:大谷石材協同組合、小林石材工業 他
使用石材:大谷石、伊達冠石、竜山石
*展覧会「カルティエ、時の結晶」は終了しています

株式会社新素材研究所
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