いしずえ

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御魂迎え行事「冬木沢詣り」~ 会津高野山八葉寺

2021.08.09

お墓・石塔

八葉寺・阿弥陀堂(本堂、旧国宝。現在は国・重文)

 会津盆地の東北、福島県会津若松市河東町(旧・冬木沢村)に位置する八葉寺は、日本浄土教の祖とも称される空也(くうや)上人によっていまから1,000年以上も前に開創された古刹です。400年以上前からお骨を木製五輪塔に納めて奉納する風習があり、「会津総菩提所 祖霊集会之霊場」とも呼ばれ、会津高野山として古くから遠近の人々の篤い信仰を集めてきた名刹です。平成28(2016)年には日本遺産に認定されています。

 

左から、空也上人の墓所、空也堂内にお祀りされている空也上人像、阿弥陀堂の左奥に見えるのが空也堂


 毎年のお盆前(8月1日から7日まで)には「冬木沢詣り(ふゆきさわまいり)」(国・重要無形文化財)と呼ばれる会津地方における御魂迎え行事があり、遠く室町時代から定着しています。

・冬木沢詣りとは?

 「冬木沢詣り」は、空也上人が近在に打ち捨てられた遺骸を鄭重に弔い、会津盆地の野辺であるこの地に埋葬されたことにより、会津の人間の祖先は皆ここに鎮まっておられるとの信仰がはじまり、そこから現代に至る五輪塔による納骨風習、そしてお盆前に各家庭にお戻りになる御魂のお迎えというかたちが出来上がってきたといわれています。

 寛文12(1672)年成立の『会津旧事雑考』には、空也上人のご遺志として、お盆前に八葉寺に納骨する風習が、「郡を挙げて」盛んであったことが記されています。また寛政13(1801)年成立の『会津四季往来』には、「冬木沢八葉寺は空也上人の開基、一国の高野なり。遺骨を納め、仏(=塔婆)を立て…亡き人を弔い…」とあり、納骨と経木塔婆を納める供養が定着していたことがわかります。

 現在は、彩色可能な半完成品の小型木製五輪塔セットが用意されており、奉納者は新盆を迎えた年の「冬木沢詣り」の際に、その五輪塔を奉納します(近年納められている五輪塔は、阿弥陀堂や奥之院でお祀りされています)。

 また、8月5日には空也堂前で空也念仏踊り(福島県の重要無形民俗文化財)が奉納されます(2020年・2021年は新柄コロナの感染症予防の観点から中止)。

阿弥陀堂内。ご遺骨(分骨)が納められた木製五輪塔をお祀りしている

八葉寺・奥の院のようす

「冬木沢詣り」の期間中、13時から施餓鬼供養が行なわれている



・五輪塔や宝篋印塔などは15,000基近く

 納骨は以前、木でつくった小型の五輪塔や宝篋印塔に、遺骨の一部や爪、髪、歯などを納め、阿弥陀堂(本堂)内部のいたるところに釘で打ち付ける方法で行なわれました。それらは大正15年の阿弥陀堂修理に際して奥之院へ移され、昭和60年に舎利殿に移されました。

 昭和46年からおこなわれた学術調査で、納骨された五輪塔や宝篋印塔などは15,000基近くあり、銘が残っているものとしては、文禄4年(1595)が最古であることがわかりました。

 八葉寺への納骨がはじまった当初は、五輪塔などそのほとんどが手づくりのようでしたが、文政期以後、明治・大正・昭和期のものは形が一定で、特定の制作者がいたと考えられています。

 

舎利殿(左)で大切に保管されている木製の骨蔵器(中・右)。五輪塔、宝篋印塔だけではなく宝塔、層塔などもあるが、五輪塔が9割9分以上を占め、地輪に遺骨、爪、髪、歯などが納められた。写真右の五輪塔には、阿弥陀堂内に打ち付けた際の釘も残っている(写真中・右は2013年3月撮影)。

 なお、八葉寺境内は自由に参拝できますが、阿弥陀堂などが開いているのは、「冬木沢詣り」の期間中(8月1日から7日)だけです。見学等を希望される方は、下記までお問い合せください。

◎会津総菩提所 諸陵山成就院八葉寺
https://houjusan.jp/八葉寺

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