特別企画
お墓や石について、さまざまな声をお届けします。
想像もしなかったものが、石に向き合っているときに生まれてくる―彫刻家 樂雅臣
自分でつくらないと、新しい何かは生まれない
――今後は違うシリーズも生まれそうですか?
樂 はい。基本的に自分のなかでは少し強制的に作風を変えていきたいと思っていて、1つのシリーズは10年スパンで考えています。20代では「輪廻」、30代で「Stone box」をつくったので、また40代で新しい作品を発表しようと、いまはあれこれ思いをめぐらせ、試作などをしているところです。
それで40代、50代、60代と考えると、あと3つ。あまりないですね、人生短いですからね(笑)。石は、他のアートよりもつくるのに時間がかかりますし(笑)。
――使う石も幅が広がりますか?
樂 そう思います。「輪廻」では「ジンバブエブラック」を使い、「Stone box」では箱のなかを想像させるような透過性のあるオニックスを中心に使い、それからいろいろな石を使うようになりました。そしてもう1つ、先ほどお話しした赤トラバーチンのような、石本来の表情の美しさを伝えられる作品づくりにも取り組んでいきたいと思っていますので、表現や目的に合わせて石の選択は広がると思います。
実際にいまもある石のサンプルを頼んでいて、それは日本ではあまり見られない石です。サンプルを取って、問題なければ原石を注文することになっています。
色彩ゆたかなオニックスによる作品「Stone box」シリーズ(アトリエにて、写真:樂雅臣)
――1つのシリーズを10年間つくっていると、ある程度、完結できますか?
樂 その先が見えてくるという感じです。いままでも「輪廻」をつくっているなかで「Stonebox」ができて、それはかなり自然な流れで生まれてきたもので、そういう流れを大切にしています。それも自分でつくらなければいけません。いまはパソコンでもデザインでき、それを誰かにつくらせることもできますが、実際に自分で石に触れてつくる過程で新しい何かが生まれてくると、僕は考えています。
そして、それこそが作家の楽しみだと思います。想像もしなかったものが、石に向き合っているときに生まれてくる――。それが石の彫刻の面白いところ。だから、僕はまだまだつくり続けます。
――今後のご活躍も楽しみです。ご協力いただき、誠にありがとうございました。
出典:「月刊石材」2020年2月号
聞き手:「月刊石材」編集部 安田 寛
樂 雅臣 RAKU MASAOMI
1983年 京都府に生まれる
2008年 東京造形大学院美術研究領域造形研究科修了
〈個展〉
2008年 「白の鳥 ~有形無形の流転~」 みゆき画廊 東京
2010年 「樂雅臣彫刻展」 T’s gallery 大阪
2014年 「Stone box」 GALLERY 座 STONE 東京
2015年 「樂雅臣個展」 賀茂別雷神社 京都
2017年 「彫刻家 樂雅臣展」 美術館えきKYOTO 京都
「彫刻家 樂雅臣展」 石川県立美術館 石川
〈グループ展〉
2005年 「The Road Not Taken.05 京都現代美術の風景」賀茂別雷神社 京都
2011年 「ten5 Vivo」 松本市美術館 長野
2015年 「PROPORTIO」 Parazzo Fortuny イタリア
2016年 吉左衞門X 樂吉左衞門 樂篤人 樂雅臣
―初めての、そして最後の親子展―佐川美術館樂吉左衞門館 滋賀
2017年 「無限の宇宙 掌中をこえて」京都国立近代美術館 京都
「INTUITION」 Parazzo Fortuny イタリア
「素材との対話」 樂翆亭美術館 富山
2018年 「FETISH」 THE CLUB × VISIONAIRE 東京
〈コレクション〉
●佐川美術館 滋賀 ●岡田美術館 神奈川 ●フェルケール博物館 静岡 ●茶の湯美術館 岐阜
●久保惣記念美術館 大阪 ●樂翠亭美術館 富山 ●中国人民対外友好協会友誼館 中国
●Kagizen ZEN CAFE 京都 ●関西学院大学 兵庫 京都大原三千院 京都 ●座 STONE 東京
●ザ・リッツカールトン京都 京都 ●パーク ハイアット 京都 京都
〈受賞〉
2018年 京都市芸術新人賞
◇樂雅臣公式ウェブサイト
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