いしずえ
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むれ源平石あかりロード2024。今年は記念の20回目-むれ源平石あかりロード実行委員会
第15回目の「むれ源平石あかりロード2019」にて
むれ源平石あかりロード2024。今年は記念の20回目
「石あかりがハブになり、横のつながりをより大切に」
むれ源平石あかりロード実行委員会
むれ源平石あかりロード実行委員会(岡本俊之実行委員長)主催の『むれ源平石あかりロード2024(以下、石あかりロード)』が8月24日(土)~9月7日(土)までの15日間、ことでん「八栗駅」から「駒立て岩」までの旧庵治街道沿い(約1キロメートル)で開催される。今年は記念すべき20回目の開催で、通常のイベントに加えて、記念イベントも予定されている。
「よく続いたと思います。スタート時は『10年続いたらいいよね』といった感じで、十年経ったときは『もう十年か』といった感じでした。コロナ禍のときは無理なことはできませんでしたし、業界状況などから、私たちのモチベーションが落ちた時期もありました。一方で、外部の期待もありましたので、途中からは続けることを意識し、身の丈にあったかたちで開催してきました」
岡本実行委員長(有限会社岡本石材)は、この20年をこう振り返る。
石あかりと一緒に岡本実行委員長
石あかりロードは2005年にスタートし、これまでの来場者は累計で100万人以上。コロナ禍のときはロード上での開催はできなかったが、「お家 de 石あかりモート」と題して新作を動画配信するなどし、何かしらの企画を毎年実施してきた。
岡本実行委員長は石あかりロードの企画立案時から携わっており、その歴史をよく知る一人。また開催期間中は、来場者に石あかりを案内する隊長を第1回から務め、「隊長としてこれまで、1万人は案内していると思います。『へー』という反応が一番多いですね(笑)」と、来場者との関わりも深い。
「石あかりロードの第1回・第2回は、『むれ源平まちづくり協議会』が主催しました。この協議会は2004年4月、高松市との合併が決まっていた当時の牟礼町長の呼びかけによって、『牟礼町をもっと元気な町にするため』に発足し、2005年にはNHK大河ドラマ『義経』の放映に合わせて、源平史跡のライトアップを企画。同時に史跡と史跡をつなぐために、石あかりを間に設置するアイデアが出されました。これが石あかりロードの出発点です」(岡本実行委員長)
第1回石あかりロード(2005年8月6日~10月1日)の開催前には、あじストーンフェア2005(讃岐石材加工協同組合主催。6月11日・12日、サンメッセ香川)で、出展者による「石あかりコンテスト」を実施。初の試みであったが、石あかりは50個ほど集まり、岡本実行委員長は当時、「これなら石あかりロードを開催できる」と確信したという。
第1回目の石あかりロードにて撮影。
ローソクの火を灯す石あかりもあった
岡本実行委員長は3代目の実行委員長で、2016年から務める。初代は中村卓史さん(有限会社中村節朗石材。2005年~06年)、2代目は松山滋さん(有限会社松山石材運送。2007年~15年)。3人とも牟礼町出身で石材業界人だが、石あかりロードは地域住民や地元の教育機関、民間企業などを巻き込んでの「町おこしイベント」であり、マスコミ取材など対外的な仕事も多く、その役目は重責だ。
「昨年、牟礼北小学校5年生に『石あかりロードでできることを考える』という課題が与えられ、11月には小学校主催の『ふるさとまつり』で、生徒が一人ひとり石あかりをつくり、『こども石あかりロード』を実施してくれました。端材を提供しましたが、『こういう石の使い方がある』とビックリしましたね。また、石あかりロード誕生秘話をテーマにした劇の上演、今回学んだことの発表もありました」
牟礼北小学校の「石あかりロード」の勉強会にて
(写真提供:石あかりロード実行委員会)
「ふるさとまつり」の当日、岡本実行委員長は所用で足を運べなかったが、後日、岡本実行委員長一人のために劇の上演などが行なわれた。石あかりづくりや劇のシナリオづくりなどを協力したからで、「とても嬉しかった。感動しましたね」と岡本実行委員長。生徒たちがつくった石あかりは、今年の石あかりロードで展示されるといい、今回の見どころの一つだ。
牟礼北小学校だけではなく、これまでには牟礼町・庵治町にある小中学校、牟礼町にある高松北高校、高松大学や香川大学なども多方面で協力してくれた。石あかりロードでは、2回目の2006年から「デザイン画」を募集しているが、高松工芸高校デザイン科は、2007年から石あかりのデザイン画を授業の課題に加え、毎回、応募してくれている。小学校から大学まで、いずれも石あかりロードが学校教育の一環になっており、その取り組みが教育面でも高く評価されているといえよう。
町おこしの好例として、石あかりロードを視察に来る自治体や商店などもあり、岡本実行委員長は「九州の商店街の方が、町おこしとして、石あかりを30個くらい買ってくれたこともあった」と振り返る。
もちろん業界内でも、茨城や埼玉などから組合等の視察があった。(一社)日本石材産業協会奈良県支部では、奈良市内で毎年8月上旬に開催されている『なら燈花会』に10年以上前から協賛し、「石あかりの小径」と題して石あかりを並べている。「当初は石あかりロード実行委員会も協力しましたが、いまは自立されています」と岡本実行委員長はいい、石あかりの広がりを喜ぶ。
日本石材産業協会奈良県支部の『なら燈花会』「石あかりの小径」事業
(写真提供:一般社団法人日本石材産業協会)
石あかりロードがこれまで継続できたのは、民間企業の支援も大きい。特に地元のことでん(高松琴平電気鉄道)は、庵治石製の「むれ源平石あかりロード記念きっぷ」を発行したり、八栗駅前には、石あかりを置くスペースを提供してくれている。また、公益財団法人イオンワンパーセントクラブとスーパーの(株)マルナカは特別協賛してくれており、実行委員会ではパブリックアートとして庵治石製のベンチを制作し、両法人名でバス停に寄贈したこともあった。
庵治石製の「むれ源平石あかりロード記念きっぷ」
八栗駅前に設置されている石あかり
パブリックアートとして、洲崎寺西のバス停に置かれた庵治石製のベンチ。イオンワンパーセントクラブとマルナカの法人名が、寄贈プレートに刻まれている
石あかりロードの取り組みは行政でも認められ、2007年には国土交通省の「日本風景街道」に登録された。また、2008年に香川県の「第6回かがわ21世紀大賞」を受賞し、2010年に国土交通省の「平成21年度手づくり郷土賞(一般部門)」を受賞。昨年は香川県の「観光香川おもてなし大賞」を受賞している。
「実行委員会としてできることは限られています。これまでのつながりを大事にしながら、新たなつながりもつくる。石あかりがハブ(接点)になり、横のつながりをより大切にして、みんなの力で盛り上げていくような石あかりロードにしたいですね。地元の子どもたちの声も刺激になります。これからもしっかりと継続し、頑張らなければならないと思っています」(岡本実行委員長)
今年の石あかりロードのテーマは「20年・感謝・未来」で、キャッチコピーは「石つむぐ はたとせの夏 咲くあかり」。新作を含め、石あかり約150個を展示する。
今年のポスター
企画展示としては、前述した牟礼北小学校の「子ども石あかりロード」を予定する。また、「石の里のアーティスト(庵治産地の石彫作家)」の作品展示(2ヵ所)や、香川県善通寺市主催の『かがわ灯りフェス』(昨年9月)で出会った「竹あかり」の団体とのコラボ企画もある。
洲崎寺の壁面には、石あかりロードの石製の案内板がある
さらに、石あかりロードに展示する石あかり作品を全国募集し、コンテスト形式で審査を行なう「JAPAN石あかりコンテスト」が復活する。開催期間中の土曜日には、源平デー、飲食屋台などのイベントも行なわれる。石あかりロードの中間に位置する洲崎寺でも、コンサートなどを行なう予定だ。
20回目となり、さまざまなノウハウを蓄積している石あかりロード。業界と地域の関わり方や石材の使い方など、参考になる部分は数多くあろう。遠方からでも、ぜひ足を運んでいただきたい。
飲食屋台のようす
◎むれ源平石あかりロード
http://www.ishiakari-road.com/