いしずえ
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須田郡司~聖なる石への旅「道教の聖地・泰山」(中国)
中国・山東省にそびえる標高1545メートルの泰山は、道教の聖地とされている「五岳」の中でも最も尊い山とされてきました。秦の始皇帝以来、歴代の皇帝たちが、この山で「封禅」の儀式を行った場所です。封禅とは中国皇帝が天と地に王の即位を知らせ、天下が太平であることに感謝する儀式のことです。
泰山へは、中天門までミニバスに乗り、そこから徒歩で登山道 を上がっていく行程が一般的です。道中には、いくつもの道教寺院があり、多くの中国人登山者は、それぞれのお寺を巡拝しながら登って行きます。
登山道は、すべて石段になっていて、登り始めると道沿いに巨岩、怪石が現れます。老若男女の登山者の姿を見ることができ、驚くのは、小さな赤ちゃんを抱えたり、幼子の手をつないだりして登る姿を見ることです。泰山は、「中国人なら人生で一度は登りたい山」と言われるほど人気があり、ご来光を拝もうと山頂を目指す人々の姿が絶えないと言われています。
泰山の登山道で、最も印象深い場所が、天門から南天門まで全 長9kmの1633段の石段です(写真1)。秦の始皇帝が作らせたという長い石段は、全長でおよそ7000段もあり ます。気が遠くなる石段を登りきると南天門があり、そこを過ぎると天街へ着きます。まさに天上の街といった雰囲気で、宿泊場や食堂にお土産屋さんが軒を並べ、客引きの声が飛びかっています。どこか天上界に来た気分にさせら、ほっとして、何か食べたくなります。
写真1
辺りは小雨が降っていて、雨合羽を着たり傘をさしたりしながら登りますが、標高が1000m以上に なるとかなり冷えてきます。途中、暖かい飲み物を飲んで休憩しながら、ようやく泰山山頂1545mの王皇頂 へ登拝することができました。道教の寺院があり、参拝者でにぎわっています。山頂に磐座らしき石があり、人々は石に向かってコインを投げ入れていました(写真2)。石には柵があるのですが、柵にたくさんの鍵が付けられていました(写真3)。
写真2
写真3
山頂近くの峰には、北方を指して横たわる巨石があります。この巨石は、長さ6.5mほどあり 深海石と呼ばれていました(写真4)。まるで、ドルメンのようにも見えます。
写真4
その近くに、何ともユニークな石があります(写真5)。仙人橋と呼ばれる石は、谷間に自然石でつながった橋です。石の崩落で自然につながったものですが、どのようにしてできたのか本当に不思議です。まさに仙人のなせる業のような形です。泰山は、道教や仏教の聖地であり、奇岩の人気観光スポットでした。
泰山は、ユネスコの世界遺産(複合遺産)に登録され、また「泰山国家地質公園」として世界ジオパークに認定されています。
写真5
※『月刊石材』2014年2月号より転載
◎All photos: (c) Gunji Suda
◎ 須田 郡司プロフィール
1962年、群馬県生まれ。島根県出雲市在住。巨石ハンター・フォトグラファー。日本国内や世界50カ国以上を訪ね、聖なる石や巨石を撮影。「石の語りべ」として全国を廻り、その魅力を伝えている。写真集『日本の巨石~イワクラの世界』(星雲社)、『日本石巡礼』、『世界石巡礼』(ともに日本経済新聞出版社)、『日本の聖なる石を訪ねて』(祥伝社)など。
◎須田郡司ツイッター
https://twitter.com/voiceofstone