いしずえ

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天然石割肌モザイク作家・本間洋一「おりおりのうた」

2020.11.11

その他


本間洋一「おりおりのうた」
「おりおりのうた」

(57×81㎝)

天然石割肌モザイク作家
本間洋一



今年もまた、再会の感動を迎え、過ぎ去りし風景を送る……。

毎年ほぼ同じように繰り返し、折り重なる思い出多き景色、これもまた私にとってもう一つの営みと実感。一見、昨年と全く同じように見える姿ではあっても、出会ったその時の心の状態が違っているので、同じものを見ているはずの己の変化が反映して、思いは多様に変化し続ける……不思議である。目の前の姿かたち、変化し続ける表情、見つめ続けていても、飽きることがない。これは自然の生命そのものであるからこそなのであろうか。

今年は1年間(2018年1月号~12月号)、新たな学習の機会を戴き、新鮮な心で、充実の日々を重ね、己の力不足を反省しながら、興味を得た対象に、もっともっと食らいついていく「しつっこさ」の必要を促され、楽しさを重ねている。

作品「おりおりのうた」は、四季の変化に裏打ちされた日本の自然、繰り返しのリズムを忘れさせる時、折々の新鮮さ、この美しさだけでも充分に私は生かされ、生き続けられると、今また感動を新たにしているところである。目に映る姿のスケッチから入り、繰り返し探求を続ける作業。1枚の画布に一つの主題を描き続けてきた中で、時にはそれらの集合体として、複合主題表現として構成することは出来ないものであろうかと、挑戦を試みた次第である。

いつも、スケッチは断片的であったり、部分に集中したものであったりで、大きく鋭く存在の根幹をえぐるとまでは届かずであるが、形の連なりによる全体が、一つの新たな生命を感じさせてくれたり、つまり私自身がその中へと入り込んでいくことが、新しい発見にもつながっていくのではないだろうかと試みを重ねているところである。

これまで多く行なってきた断片的なスケッチから、それらの綜合として、季節の変化や連なりの様子を1枚の絵に、2点の作品として価値づけてみてはと試みた次第。全体として異なる表情を持つ表現が、隣り合う次の表現へと導くように連続性を生み出せないかと試みたが、限られた画面に変化の妙を生み出すことは、私にとってまだ試行錯誤の段階である。

断続性の中に時の変化を予測し、想像する範囲に留まってはいるが、新鮮さと変化の心地良さ、それらが1点の作品の中で語り合いながら全体として心地良い構成にしていくことが、これからの課題であり、目標として挑戦を続けたい。

このような次第で今回は異空間の複合構成が未消化のままの一つの実験に終わっているが、表現内容、部分と全体が違和感なく心地良い表現へとつなげるのは、更に次作でも課題として取り組んでいきたい。複合主題の表現が全体としても一つの世界を構成し、変化とリズムと調和の妙が活かされるよう、新たな探求へと進みたい。


◇こだいら平和美術展にモザイク作品を出品
本間洋一氏は(2018年)9月16日から19日まで、東京都小平市のルネこだいら・展示室で開催された「こだいら平和美術展」にモザイク作品2点「洋上の日の出」と「雪月花」を出品しました。

この展覧会はこだいら平和コンサート・美術展実行委員会の主催、小平市の後援で開催され、同市にゆかりのある美術家34名がそれぞれの作品を出品。ほとんどが絵画等の平面作品の中で本間氏のモザイク作品は生き生きと美しい立体的表現を示しました。

*現在、会期を終了しています。

本間洋一「おりおりのうた」作品「雪月花」

本間洋一「おりおりのうた」作品「洋上の日の出」「雪月花」を出品



*「月刊石材」2018年10月号より転載
内容は同号掲載当時のものです


本間洋一(ほんま よういち)
東京生まれ。武蔵野美術学校(現美術大学)卒業。大理石モザイクをはじめ、建築において手仕事で石を活かす造形を専業とし、下絵、模型から現場制作に至る全工程を自ら行ない、建築との融合を目指す。