いしずえ

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須田郡司~聖なる石への旅「宮崎の石神」(宮崎県)

2021.02.18

その他

写真1

石神山との再会
 宮崎県の日向市に「石神山」という山があります。私が初めて訪れたのは2004年、“日本石巡礼”という軽バンで日本中の聖なる石を巡る旅をしていた最中のことでした。地元の長老の方に「石神山にはかつて信仰を集めた巨石(石神)があり、昔はそこでお祭りをしていたが、今は忘れられつつある」との話を聞いて、どうしてもその石を見たいと思い、山へ向かいました。

 石神山に登山道は無く、地元の方に道を尋ねながらようやく辿り着きました。確かに巨石はあったのですが、周囲は草木に覆われ石の全体像がわかりませんでした。その時の石神山レポートを、私はあるネット上に載せました(写真1、2004年当時の石神山の石神。周囲は薮で覆われていた)。

 そのネットの記事を読んだ地元のあるご姉妹は石神山に入り、薮払いを始めたそうです。ネットの記事を目にしてから6年の間、ふたりは少しずつ石神山の石神さんのまわりの薮を払い、その範囲を広げていったといいます。薮を払えば払うほど、大きな石がごろごろ出てくることに驚き、誰か専門家の人に見てもらおう、と思ったそうです。そして、宮崎のイワクラ学会の仲間である故・谷口実智代さんに「石神山を見に来て欲しい」と、連絡をとったそうです。

 これが石神山復活の始まりでした。それまでも石神山のうわさは耳にしていたけれど、登山口もわからず、藪に埋もれた巨石の写真では、その神々しいまでの魅力の半分も伝わってこない。

 ところが6年の歳月をかけて、ふたりが藪払いをした石神は圧倒的な存在感で訪れるものみんなを魅了しました。その後、「日向の巨石シンポジウム」のプログラムとして、60名もの参加者を石神山に迎えるほどになったそうです(写真2、石神山の登り口。登山しやすいように道も整備された)。

写真2

 2012年2月、石神山の麓にある田の原小学校に於いて、【巨石写真家・須田郡司と楽しむ「田の原宝探しトレッキング〜記紀神話1300年をたどって」】というイベントが行われました。このイベントは、谷口さんが企画してくれたものでした。8年ぶりに石神山の巨石群と再会できました。薮が払われた石神さんはどこか嬉しそうで、神々しく見えました(写真3)。石は規則正しく配列され、石組は正確に東西南北を指していました(写真4)。

写真3

写真4

 帰りがけ、病気で入院中の谷口さんをお見舞いした時、巨石の話をする彼女は実に嬉しそうでした。それが最後のお別れになるとは夢にも思いませんでした。いま、彼女の遺志は、「日向巨石ネットワーク」の方々へ受け継がれています。


神様山との出合い

 宮崎の日向巨石ネットワークの緒方さんから「神様山」(かみさんやま)と呼ばれる山に巨石群があり、ぜひ見て欲しいとの連絡をいただき、2013年の夏、宮崎でのイベントの合間に案内して頂きました。

 日向市で緒方さんと合流し、保子(ほおり)川沿いの県道207号線を上流へ向かって走りました。神様山は延岡市北川町の上祝子(かみほおり)地区にあり大崩山の登山口にあたります。神様山の入口は、「洞穴遺跡」の標柱が目印です。

 ここから山へ240段の石段を登ると平らな空間が現れ、左前方に巨大な岩塊が現れます(写真5、6)。近づくと岩屋の大きさに圧倒され(高さ約20m)、まさに神様の名前にふさわしい。木の鳥居の奥に神棚が置かれ、三角形の石が御神体のように鎮座していました(写真7)。岩と岩の隙間に洞窟状の空間に納められた石は、見事な二等辺三角形の形(三角石の高さ2.4m、底辺の長さ3.8m)で、どこか人工的に配置たように見えます。

写真5

写真6

写真7

 ここは、明治18年から昭和30年までは麓の祝子川沿いにあった祝子川神社を移し祀った場所です。洞穴からは縄文時代のヤジリや土器の破片などが出土しており、巣ノ津屋洞窟遺跡と呼ばれ、日本神話の山幸彦(ホウリノミコト)が過ごした岩屋ではないかとの説もあります。

 神様山の巨石群の前に立つと、古代の人々が祈り、踊りや歌を奉納していたであろう光景が想像できます。石の聖地は、まさに時空を越えた場所なのかもしれません。

 

※『月刊石材』2014年7月号より転載

 

◎All photos: (c) Gunji Suda

◎ 須田 郡司プロフィール
1962年、群馬県生まれ。島根県出雲市在住。巨石ハンター・フォトグラファー。日本国内や世界50カ国以上を訪ね、聖なる石や巨石を撮影。「石の語りべ」として全国を廻り、その魅力を伝えている。写真集『日本の巨石~イワクラの世界』(星雲社)、『日本石巡礼』、『世界石巡礼』(ともに日本経済新聞出版社)、『日本の聖なる石を訪ねて』(祥伝社)など。

◎須田郡司ツイッター
https://twitter.com/voiceofstone