いしずえ

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須田郡司~聖なる石への旅「ピエドラ・デル・ペニョール〜奇岩の石の聖地」(コロンビア)

2020.11.12

その他

 写真1


 コロンビアの首都ボゴタから飛行機で1時間あまりでメデジンへ到着する。ここはコロンビア西部にあるアンティオキア県の県都で、人口約250万人を誇る、コロンビア第2の都市だ。標高約1,500メートルの盆地のなかにあるため気温は年中18℃から28℃に安定し、快適な環境だ。街を歩けば、巨大な近代的建築物を至るところで見ることができる。メデジンの中心部のホテルに宿をとり、翌日、ローカルバスに乗って奇岩の名所ピエドラ・デル・ペニョール(ペニョール岩)へと向かった(写真1)。

 バスターミナルを出発し、まもなくすると山上への連続カーブが待っていた。ひと山を越えると、次第に辺りは起伏に富んだ緑豊かな田園風景が広がっていた。のどかで美しい光景を見ながら走るバスは、何とも心地がよい。

 やがて、道路の両サイドに湖畔(グアタペ湖)が見え隠れしてくると、突然、巨大な岩が車窓から眼に飛び込んできた。何ともすごい迫力。私が興奮しながら写真を撮っていると、バスは巨岩への道路の入口に停まった。そこからオート三輪に乗り変えて、巨岩の麓へ向かう(写真2)。

写真2


 何とも存在感のある岩だ。下から見上げると、岩の巨大さに圧倒される。巨岩には、何か絆創膏のようなものが付いているが、よく見ると階段だ。周囲には、おみやげ屋さんやレストランが集まっていて、かなりの観光地のようだ(写真3)。エル・ペニョン市のグアタペ村にある高さ220メートルの一枚岩、ピエドラ・デル・ペニョールは、景勝地として知られる観光スポットだ。いまでは岩に階段が付けられ、だれでも岩上に上ることができる。

写真3


 我々は、登山道の入口で入場料7,000ペソ(約350円)を払い、さっそく岩山に上ることにした(写真4)。階段は、岩の割れ筋の溝に造られていて、上りと下りの二つの道があった(写真5)。10分ほど上ったところに、横に行く道がある。その外れまで進むと、聖母マリア像と思しき銅像が岩を見上げるように建立されていた(写真6)。もしかすると、岩山の頂には礼拝堂でも建立されているかも知れないと想像する。

写真4

写真5

写真6


 649段の階段を約15分で上って頂上に到着。しかし、予想に反し頂上には、礼拝堂は無く、カフェ&展望台があった(写真7)。展望台の2階は、奇岩グッズなどを売るおみやげ屋さんになっていた(写真8)。屋上に造られた展望台からは360度のパノラマ風景が待っていた(写真9)。湖水地方の景観が広がっていて、入り組んだ島々と湖が実に美しい(写真10)。

写真7

写真8

写真9

写真10


 1954年、ルイス・エドゥアルド・ビジェガス・ロペスという人物によってこの巨岩は、初めて登頂される。その後、登山ルートが24ヵ所も見つけられ、ロッククライマーにとって人気の奇岩だという。

 初めて、バスの窓からこの岩を見た時、岩にペンキで書かれた文字「G」と「I」(「U」の字の途中と思われる)が見えた(写真11)。この岩は、もともとグアタペ村にあることから「グアタペ岩」と呼ばれていた。そこで村の人達は、 巨岩に村名の文字「GUATPE」をペイントしようと計画した。しかし、「G」と「U」の文字を書いている時、近隣の自治体エル・ペニョン市からクレームがあり、途中で中止になったようだ。

写真11


 実は眼下に広がるグアタペ湖は、いまから25年ほど前に造られた人造湖である。エル・ペニョン市は、観光開発と水源確保のために湖を造り、橋でつないで美しい景観を創った。この景観は、多くの人々を魅了し、いまではホテルや保養施設、別荘などが湖畔に建ち並んでいる。

 そして、何と言ってもその中心的な存在が、この一枚岩だろう。この人造湖は、巨岩のお陰でさらなる聖地性を高めた。人々はこの岩に上り、人造湖の美しさに感動せずにはいられないだろう。

 この巨岩を見ていると、やがてここは宗教的な聖地になるのではないかと思えてくる。途中にマリア像があったように、やがてカソリックの聖地として岩上に礼拝堂ができるのも、遠い未来のことではないだろう。


写真12 展望台から岩上を望む。
巨岩の岩上は、安全のため長方形に柵が取り付けられている。

 

※『月刊石材』2015年2月号より転載

 

◎All photos: (c) Gunji Suda

◎ 須田 郡司プロフィール
1962年、群馬県生まれ。島根県出雲市在住。巨石ハンター・フォトグラファー。日本国内や世界50カ国以上を訪ね、聖なる石や巨石を撮影。「石の語りべ」として全国を廻り、その魅力を伝えている。写真集『日本の巨石~イワクラの世界』(星雲社)、『日本石巡礼』、『世界石巡礼』(ともに日本経済新聞出版社)、『日本の聖なる石を訪ねて』(祥伝社)など。

◎須田郡司ツイッター
https://twitter.com/voiceofstone