いしずえ

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お墓参りの基礎知識 ~ お墓参りの作法、お墓参りの時期、お盆やお彼岸の意味など

2021.05.28

お墓・石塔

お墓参り

 

お墓参りの基礎知識


 故人の命日、お正月やお盆、お彼岸などに、お墓参りへ行く方は多いと思います。ここでは、改めて「お墓参りの基礎知識」を紹介します。お墓参りは、日本人の大切な習慣です。大切にしていきたいですね。

 

・お墓参りは大切な習慣 ~ご先祖様には子孫を幸せにする力があります~

 日本人の意識調査によると、宗教行為のなかでは「お墓参り」と「初詣」がダントツで、20歳から70歳までの70%以上という大多数が行なっています。

 しかし残念なのは、「お墓参り」も「初詣」も単なる年中行事のようになり、長い間、日本人が伝えてきた本来の「大切な意味」が忘れられはじめていることです。

 「大切な意味」とは何でしょう。

 それは、「ご先祖様には子孫を幸せにする力がある」ということです。ただし、子孫がご先祖様をお祭りしなければ、「幸せ」は実現しません。このことは、近代日本の思想家であり、民俗学の父である柳田國男が『先祖の話』のなかで、くり返し述べています。

 中国・儒教の古典で孔子様の編纂とされる『詩経』には、「先祖祭祀」「先祖崇拝」をすると、子孫に「福禄寿」(子宝、裕福、長寿)がもたらされる、という詩があります。

 またお釈迦様は、次のような遺言を残しました。『大般涅槃経』というお経に、「仏塔(=お墓)を花輪、お香、顔料(日本の場合はお水)、そして清らかな心をもってお参りすれば、長い間、利益と幸せが得られる。また死後には天界の善いところ(浄土)に生まれかわる」と。

 日本の先祖祭に多大な影響を与えた孔子様、お釈迦様のおふたりが、ご先祖様をお祭りすれば、「子孫は幸せになれる」ということを認めています。つまり、「ご先祖様には子孫を幸せにする力がある」ということです。

 ご先祖様をお祭りする場として代表的なのは「お墓」です。ぜひ、「ご先祖様には子孫を幸せにする力がある」ということを信じてお墓参りをしてください。

 必ず「幸せ」が訪れることでしょう。

 

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・お墓参りの作法

 お墓は、故人やご先祖様をおまつりするところです。いま自分が生きているのは、かけがえのない命をバトンリレーのように世代や時代を超えて連綿と受け継いでくれたご先祖様がいたからです。その誰かしら一人でもバトンを落としていたら、いまの自分は存在しなかったのです。

 つまり、お墓参りは、そのすべてのご先祖様に対して、自分や家族が無事に暮らしていることを報告し、感謝の気持ちを伝える機会でもあるのです。

・お墓参りの時期

 「仏滅にお参りしてはいけない」というのは、まったく根拠のない俗信で、お墓参りはいつ行っても構いません。

 仏教の場合は祥月命日(しょうげつめいにち)や月命日、お正月、お彼岸(春秋)、お盆、年忌法要などが多いようです。

 神式の場合は祥月命日や月命日、式年祭(1、3、5、10年祭、以後10年おきに50年祭まで)にお参りすることが多いようです。

 キリスト教の場合は命日のほか、カトリックでは万霊節(11月2日)、プロテスタントでは死後1カ月後の昇天記念日と、1、3、7年目の昇天記念日にお参りするようです。

花見潟墓地

・お墓参りの手順

ご本尊にお参り
 寺院墓地の場合、まずご住職に挨拶し、本堂のご本尊をお参りします。

掃除とお供え
 手桶に水を汲んでお墓に向かい、合掌礼拝してから掃除をします。花立てに水を入れて(1つの場合は向かって左側に)花を飾り、お供えをします(食べ物は、折った半紙の上に置きます)。

墓石にお参り
 故人とご縁の深い人から順番にお参りします。墓石の正面に進み、お線香を手向け、軽く目を閉じて合掌します(手に数珠を掛けたり、お題目を唱えても構いません)。
 ※神式では合掌せず、二礼・二拍手・一礼

 花とお線香以外のお供え物は、野良猫やカラスなどに食い荒らされないように持ち帰ります。

お墓参り

・お墓参り十ヵ条

1、祥月命日にお墓参り
 祥月命日(故人の亡くなった月日と同じ月日)には、お墓参りをしてください。ご先祖様の喜びは、あなたご自身の喜びでもあります。

2、正月、お盆、両彼岸にお墓参り
 毎月は無理でもお正月・春彼岸・お盆・秋彼岸の年4回は、お墓参りをしましょう。

3、記念日にお墓参り
 ご自身とご両親の誕生日、七五三のお祝い、入学、卒業、成人、結婚、出産、事業の成功など、喜ばしいこと、うれしいことがあったときは、感謝の気持ちを込めてお墓参りをしましょう。

4、近くへ来たらお墓参り
 用事か何かで、墓地の近くに来たらお墓参りをしましょう。ついで参りも、ご先祖様はお喜びになります。

5、誘われてお墓参り
 お知り合いやご家族からお墓参りを誘われてもご一緒しましょう。はじめはその気がなくとも、お墓参りをすると気持ちがスッキリします。

6、夢を見たらお墓参り
 ご先祖様の夢を見ると、とても気になりお墓参りがしたくなります。手を合わせて、心を静めましょう。

7、悩みがあればお墓参り
 悩みや面白くないこと、感情がいら立ってどうにも治まらないとき、どうしてよいかわからないときには、お墓参りをしましょう。ご先祖様が力を与えてくれます。

8、望みを失ったときにお墓参り
 何かを失敗した、スランプでガックリしたときなど、お墓参りをしてください。ご先祖様の力で、あなたの心に自信が湧き上がってくるでしょう。

9、苦痛があればお墓参り
 あなたご自身、あるいはご家族の方が病気になったり、ケガをされたとき、治療、静養はもちろん、神仏への祈願とともにお墓参りをしましょう。

10、無縁様のお墓参り
 ご自身の家のご先祖様だけではなく、お世話になったお家のお墓、あるいは無縁様のお墓にも手を合わせてください。無縁様のお墓を参りする意味は、たいへん意義深いものです。

・「お盆」(盂蘭盆会)ってどういう日?

 お盆のルーツは『仏説盂蘭盆経(ぶっせつうらぼんきょう)』です。古代イラン地方の、先祖の霊魂を我が家に招いて祀る「ウルバン」が盂蘭盆(ウラボン)の語源とされ、その風習をもとに中国で4世紀頃につくられたといわれています。

 そのお経には、お釈迦様の弟子の一人、目連(もくれん)が登場します。修行で超能力を得た目連は、亡き母が餓鬼道(がきどう)で苦しんでいることを知り、お釈迦様に相談します。お釈迦様は「夏安居(げあんご、雨季の屋内修行)の最終日に多くの高僧に供養すれば、その功徳で母を救うことができる」と教えてくださり、その通りに実行すると、無事救い出すことができたというお話です。

 さらに、中国の道教や儒教の教えにより先祖供養の要素が加わって日本に伝わり、日本では推古天皇の時(606年)にお盆が始まったとされています。

万霊灯籠

・お彼岸

 彼岸とは、「彼方(かなた)にある岸」(向こう岸)のこと。大きな海や川を挟んだこちら側は「此岸(しがん)」です。仏教では、あの世(極楽浄土、悟りの世界)とこの世(娑婆〈しゃば〉、迷いの世界)を2つの岸に分けて例えたのです。

 お彼岸の歴史は古く、聖徳太子が創建した大阪の四天王寺にその起源と思われる逸話が残っています。四天王寺では、お彼岸の中日(春・秋分の日)に夕日が真西(西門の鳥居)に沈みます。その鳥居には、聖徳太子が書いたとされる「ここはお釈迦様が説法をされたところ、極楽浄土の東門の中心に当たる」という漢文があって、ここに沈む夕日を拝み、阿弥陀様の西方浄土(極楽浄土)へ極楽往生を願うという信仰が生まれたということです。

 ちなみに、お彼岸は入り・中日・明けの3つに分かれますが、お供え物も「入り団子(山盛り)、中日ボタ餅、明け団子(バラ積み)」にします。

・お線香

 お香は、古代インドで悪臭を除去したり、芳香を楽しむ習慣が起源とされ、それが仏様の供養にも採用されました。

 また、インドから東西に広まる過程で西洋では液体(香水)となり、東洋では燃焼させる固体(香料)として発展したそうです。日本へは仏教伝来とともに伝わり、中国から今のような棒状の線香が伝わったのは室町時代末期、国内生産は江戸時代からと言われています。

 『大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)』には、「ストゥーパ(卒塔婆〈そとうば〉)をつくり、そこに花輪、香料、顔料をささげて礼拝し、また心を清らかにしてお参りする人々には、長い間利益と幸せが起こるであろう」とあり、また『法華経(ほけきょう)』には「如来たちの遺骨や塔廟、土偶像、また壁や粘土づくりの塔に像を描き、香と華とを手向けた人々も、すべて悟りに到達するであろう」と書かれています。

 さらに日本では儒教的な意味が加わり、「故人の魂が線香の煙に乗って位牌に寄り付くという考え(死生観)が生まれたのではないか」という話が発展して「お線香は仏様の食べ物」「煙が上がっていくのは極楽への道」と説明する人もいます。

・お供えの花 ~お供えの花は何がいい?

 花立てが仏教の三具足(3つの仏具。他の2つは香炉と燭台)の1つになっているように、花を供えることは仏教的に重要な意味があります。自然界の厳しい環境に耐えて咲く姿は、仏様に対する修行(忍辱〈にんにく〉)の誓いとされているからです。

 最近は仏花にこだわらず、故人が好きだった花をお供えする人もいますが、一般的にバラやアザミなど棘(とげ)のあるものは不可で、香りの強いものは不向きとされています。また、できれば生花がよいでしょう。

 仏花に相応しい色合いは、白や赤、黄色、紫とされ、基本的に同じ花を2束(1対)で用意します。定番の品種は、キク(通年)、カーネーション(4~5月)、キンギョソウ(4~6月)、スターチス(4~7月)、ヒャクニチソウ(5~10月)、ストック(10~3月)など。春はこれにアイリス、キンセンカ、夏はリンドウ、グラジオラス、ケイトウなどが加わり、お盆ではミソハギやホオズキなども好まれます。

 花の数は奇数が一般的で、ステム(柄)は花立ての高さよりも4~5センチくらい短くカットし、背面を平らにして、全体の形をひし形に整えます。

・六地蔵 ~墓地やお寺で見かける六地蔵って何?

 お地蔵様の起源はインドの農業女神で、正式名は「クシティ・ガルバ」。クシティは大地、ガルバは母胎という意味です。お釈迦様の入滅後56億7000万年後に弥勒如来(菩薩)が世に現れるまで(仏様不在の末法の間)、六道に苦しむ人々を救済することがお地蔵様の使命(本願)であるとお経で説かれています。

 六道とは、地獄・餓鬼(がき)・畜生(ちくしょう)・修羅(しゅら、阿修羅〈あしゅら〉)・人・天のことで、六地蔵がそれぞれの世界で苦しむ人を救ってくれるのです。また、墓地の入口は、いわば生者と死者の世界を分ける境界であり、お地蔵様は、あの世へ旅立つ人の安全と安らぎ(救い)を祈る道祖神であると同時に、死者が迷ってあの世から現世に戻ってこないための賽の神でもあるのです。

六地蔵の写真

・納骨

 火葬が終わるとすぐに納骨をする場合がありますが、一般的にはいったん家に帰り、祭壇に安置して四十九日までは弔問を受けます。神式は死後50日目に行なう五十日祭、キリスト教では1ヵ月後の追悼ミサに納骨します。

 納骨の日は、いったん菩提寺で法要をするのが正しい方法ですが、自宅で焼香をして墓地に向かってもかまいません。

 納骨作業は、お墓を建てた石材店にお願いすれば安全に行なえます。

・忌日(きにち)と年忌法要 ~年忌法要はいつまで行なわれる?

 仏教では、臨終の日(命日)を含む49日間を「中陰」「中有」と呼び、この間、故人に対して7日ごと7人の審判官による裁きが行なわれます。次にどの六道の世界に生まれ変わるのか、その最終判定が下されるのが49日目(満中陰)で、この日をもって忌明(きあ)けとなります(地方によっては五七日〈いつなぬか〉=35日目が忌明けとなります)。

 忌日及び年忌法要は、下記の早見表のとおりですが、年忌法要について遺族のほかに親族、友人、知人が参列するのは三回忌まで、七回忌は遺族と親族で供養し、十三回忌以降は遺族だけで供養するのが一般的のようです。

 なお、三十三回忌(地方によっては五十回忌)は「弔上(とむらい)げ」と呼ばれ、すべての死者は無罪となって極楽浄土に行くとされています。弔い上げが終わると、戒名の入った位牌を仏壇から片付けて、それ以後は先祖代々の位牌(○○家先祖の霊)でお祀りします。

・宗派別のお焼香の仕方

天台宗
 抹香をつまみ、額の前に軽くささげて、香炉に入れる。仏・法・僧の三宝に供養するという意味から、回数は3回ともいわれているが、天台宗ではとくに回数を定めていない。

真言宗
 抹香をつまみ、額の前に軽くささげて、香炉に入れる。仏・法・僧の三宝に供養するという意味から、回数は3回ともいわれているが、必ずしも3回でなくてもよい。

浄土宗
 抹香をつまみ、額の前に軽くささげて、香炉に入れる。仏・法・僧の三宝に供養するという意味から、回数は3回ともいわれているが、1回でも、2回でもよい。

浄土真宗
 抹香をつまみ、額の前にささげずに、香炉に入れる。回数は浄土真宗本願寺派は1回、真宗大谷派は2回となっている。

曹洞宗
 抹香をつまみ、1回目は額の前に軽くささげ、香炉に入れる。2回目は額の前にささげずに、香炉に入れる。回数は、この2回の場合が多い。

臨済宗
 抹香をつまみ、額の前に軽くささげて、香炉に入れる。仏・法・僧の三宝に供養するという意味から、回数は3回ともいわれているが、必ずしも3回でなくてもよい。

日蓮宗
 抹香をつまみ、額の前に軽くささげて、香炉に入れる。仏・法・僧の三宝に供養するという意味から、回数は3回ともいわれているが、必ずしも3回でなくてもよい。

・お墓の引っ越し(改葬)について

 すでに埋葬(埋蔵)した遺骨を他の墓地や納骨堂に移すことを「改葬」といいます。「お墓が遠くて定期的に墓参できない」「往復の交通費の負担が大きい」「お墓の承継者がいなくなった」「別の宗派に改宗した」「分散している遺骨を一つにまとめたい」といった理由で、改葬を考える方が増えています。

 改葬するには、公的な手続きが必要となります。改葬の手順は下記のとおりです。

1、 改葬の相談
 墓地管理者に事情を説明し、墓石の解体撤去などの依頼を含め、必要な手続き等について相談する。

2、新規墓地等を確保
 新しい墓地や納骨堂を確保(新規購入)する。

3、 受入証明書を取得
 上記の管理者から「受入証明書」を発行してもらう。
 ※永代使用承諾証(霊園使用許可証)で代用できることもあります。

4、申請書に記入
 現在使用する墓地・納骨堂がある市区町村の役場で「改葬許可申請書」を受け取り、必要事項を記入する。

5、申請書に署名捺印
 現在使用する墓地・納骨堂の管理者から、上記の申請書に署名捺印をしてもらう。

6、許可証を取得
 再び上記4の役場に「改葬許可申請書」「受入証明書」を提出し、「改葬許可証」を発行してもらう。

7、 遺骨の引き取り
 現在使用する墓地・納骨堂で抜魂式や供養、必要な手続きを済ませてから遺骨を引き取る。

8,書類提出
 遺骨と「改葬許可証」「永代使用承諾書」を新しい墓地・納骨堂の管理者に提出し、入魂式や供養などを行なってから納骨する。

・『お墓参り手帳』は、お墓参りの日記帳


 上記のお墓参りの基礎知識は、『お墓参り手帳』にも書いてあります。

 
 『お墓参り手帳』は、その日の気持ちを記入できる「お墓参りの日記帳」です。

 「今日は子どもの入学式。ご先祖様ありがとう。これからもよろしくお願いします」
 「おばあちゃんの病気が早く治りますように。おじいちゃん、よろしくね」
 「孫の高校受験の合格祈願をした。ばあさん、よろしく頼む」
 「もうすぐ結婚記念日。また来るからね。子どもたちは、みんな元気にしています」

 ご先祖様への感謝の気持ち、お子さんやお孫さんの幸せ祈願、故人へのメッセージなど、その日の気持ちを『お墓参り手帳』に書き留めてください。

 心がスッキリして幸せな気持ちになり、そしてご先祖様や亡き人に見守られ、「いま」を一緒に生きていることが実感できるはずです。

 『お墓参り手帳』のお求めは、お近くの石材店までお願いします。