いしずえ
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昭島・昭和の森 武藤順九彫刻園(東京都昭島市)
彫刻園入り口の門柱(石碑)はイタリア産大理石(約4.5トン)で、題字は武藤氏
(写真:一般社団法人「風の環」提供)
「昭島・昭和の森 武藤順九彫刻園」は、東京都昭島市内の自然に囲まれた都市型リゾートホテル“フォレスト・イン 昭和館”の北側隣接地、昭和飛行機工業(株)が保有する樹林地に開園しました。開園と今後の運営には、昭島市、昭和飛行機工業、一般社団法人「風の環」、昭和の森芸術文化振興会、そして武藤順九氏が関わり、まさに行政・民間企業(団体)・アーティストが三位一体となって力を合わせ、自然環境の保護はもちろん、市民や世界中からの来訪者、特に子どもたちが身近に自然と芸術を楽しめる環境を整備することで、感性や想像(創造)力を育むことを大きな目的としています。
2019年6月9日のグランドオープン前日には、竣工式、除幕式、そして全国から400名以上が出席した盛大な開園記念祝賀会が開催されました。祝賀会で武藤氏は「彫刻園」への思いを次のように語りました。
――私は世界中を見てきて、日本人独特の自然観・宇宙観は世界に誇れるすばらしいものと思っている。1973年にヨーロッパへ渡り、50年近くイタリアですごしているが、私のアイデンティティを形成しているもののひとつが、生まれ育った日本の自然であるのは間違いなく、自然への思い、そして生命(いのち)を敬う思いを、私は自身の作品に込めてきた。そして小惑星・地球のなかで人類は何を願うのか、動物や植物は自然のままに共生するが、なぜ人類はそれを実現できないのかを問いかけてきた。
そのようなことを背景に、私は、自分の祖国である日本で自然環境を大事に思いながら作品を置けないかという夢を持っていた。それが今回ご縁をいただき、官民がひとつの同じ目的を持ち、多くの皆様にご協力いただいて、「彫刻園」というすばらしい空間で実現できたことは感謝に堪えない。
祝賀会で彫刻園への思いを語る武藤順九氏と、一般社団法人「風の環」・武藤典子理事長
全国から400名以上が集まり盛大に開催された祝賀会(2019年6月8日開催)
日本の文化行政は、残念ながら世界では遅れている。文化とは私たち一人ひとりの生活そのもので、そのなかには政治も経済も、そしてアートも含まれ、そこで個々の美意識が育まれ、それが個性となり、その総合体が国の文化となり、その国を成長させる。
この「彫刻園」は官民が協同して日本人の自然観、宇宙観を世界に発信し、文化を育む日本初のプロジェクトになった。その意味はとても大きい。だから「彫刻園」の主役は、あくまでも自然。9点の私の彫刻は、まさに“森の妖精”になる。そこにはミュージアムのような押し付けは不要。四季折々に変化する自然のなかで、妖精たちは生き続ける。
ぜひ一年を通じてご来園いただいて感動を味わい、またお友だちなどと来ていただいて、一人でも多くの方とその感動を共有してください。そして、この彫刻の森を未来へと紡いでいただくことを、心より願っています――
祝賀会(2019年6月8日)では、その後の2021年3月28日に東日本大震災(2011年3月11日)で甚大な被害を受けた宮城県石巻市南浜地区に開園した石巻南浜津波復興祈念公園に設置された「東日本大震災鎮魂と追悼のモニュメント」(作品名:「CIRCLE WIND〈風の環〉2011-絆-」)の原型もお披露目され、宮城県出身の武藤氏は被災地と作品に込めた思いを熱く語った(インタビュー「東日本大震災鎮魂と追悼のモニュメント―彫刻家・画家 武藤順九」)
*「月刊石材」2019年7月号で掲載したものを再構成しています
◇昭島・昭和の森 武藤順九彫刻園
所在地:東京都昭島市昭和の森(フォレスト・イン 昭和館 北側樹林地)
https://www.june9-showa-no-mori-akishima.jp/
◇公式サイト「武藤順九の宇宙」
https://www.junkyu.jp
◇特集「彫刻家・画家 武藤順九」(当サイト内)
https://stone-c.net/report/4542
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