いしずえ

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新素材研究所「日吉大社礎石」(小田原文化財団 江之浦測候所)

2020.11.13

建築・造園・石垣



日吉大社礎石
平安時代
(小田原文化財団 江之浦測候所)

新素材研究所 / 杉本博司+榊田倫之

2017年10月にオープンした江之浦測候所はいまだ完成を見ない。施主である現代美術作家・杉本博司の思いが尽きず、石も尽きず、順次、新たな施設を追加しているからである。

「私は石から空間を考える。縁あって私のもとへ来てくれる石から刺激を受け、それらをどう使おうかとわくわくする」

杉本は本誌(「月刊石材」2019年12月号)巻頭特集インタビュー内でそう語っている。時を超えて国内外から集まってくる石たちとの交感、対話は尽きることがないのであろう。広大なみかん畑の跡地につくられている江之浦測候所が広がり続ける理由がよくわかる。

本誌では今年(2019年)、杉本が建築家の榊田倫之とともに設立した新素材研究所の仕事を毎号の表紙とともに紹介してきた。「石にはそれぞれ景色がある」と考え、その景色・個性を生かして使う姿勢には見習うべきところが多く、またそれらの仕事からは新発見・再発見を促された。

杉本の構想が具現化される江之浦測候所は、その象徴といえる。開館からこの3年間でずい分、新たな施設・空間が整備され、それらは到底、誌面では伝えきれない。石を生業とするなら、何度となく足を運ぶべきである。無数の石たちが新たな生命を授かったように謳歌するのを見る。

京都五条大橋の礎石
(桃山時代)
村野藤吾設計の比燕荘(昭和16年)の
玄関庭石として据えられていたもの


夏至光遥拝100メートルギャラリーと
小松石を据えた三角形の苔庭

中央に大名屋敷の大灯籠を据えていた伽藍石を置く円形石舞台。周囲に江戸城石垣のために切り出された巨石を配置し、京都市電の敷石を放射状に敷く

大分県国東半島の五輪塔
(鎌倉時代)



2点:細見古香庵収集の石仏群の一部
(室町-江戸時代)


根府川石浮橋の景色


All photos: (c) Hiroshi Sugimoto / Courtesy of New Material Research Laboratory


*「月刊石材」2019年12月号より転載


◇江之浦測候所 施設概要
構想:杉本博司
基本設計・デザイン監修:株式会社新素材研究所
実施設計・監理:株式会社榊田倫之建築設計事務所
施工:鹿島建設株式会社
石工事:株式会社小林石材工業

公益財団法人小田原文化財団 江之浦測候所
所在地:神奈川県小田原市江之浦362番地1
Tel. 0465-42-9170
www.odawara-af.com
休館日:火・水曜日、年末年始および臨時休館日
入館料:3,000円(税別)
※見学は事前予約制。公式ウェブサイト(上記)より

株式会社新素材研究所
https://shinsoken.jp