いしずえ
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建築家・押尾章治の仕事「大法寺 ぴらみ堂」
「大法寺 ぴらみ堂」
神奈川県綾瀬市、 2019年、 納骨堂
建築家・押尾章治の仕事
一級建築士事務所UA有限会社
「亡き人の住まう観念的な世界と、私たちが暮らす現実の世界とをつなぐのが、宗教施設をつくる建築家としての私の役割。そのためにはより宗教者に近い感覚、視点でアプローチしようと考えている。祈りや信仰には、決して揺らぐことのない石の存在が必要。未来へと残るものであり、可能な限り石を使いたい」
全国に多数の宗教施設・礼拝空間をつくる建築家・押尾章治氏(一級建築士事務所UA・代表取締役)は本誌(「月刊石材」2020年9月号)インタビューにてそう話されています。祈りや信仰、供養に関連する仕事は、慰霊広場(東日本大震災の被災地等)、霊園・墓地の設計・ブランディング、納骨堂・合祀墓・永代供養墓、礼拝堂、ギャラリー・展示会場等の設計と幅広く、いずれも心やすまる空間設計が高い評価を得ています。
*押尾氏のインタビュー記事はこちらから。
近作(2020年8月時点)は、「ぴらみ堂」。白河石を百段積んだピラミッド型の納骨堂で、「石を積み重ねて祈る」という、賽の河原をはじめとした古来からの仏教信仰とその所作を採り入れて設計されています。また内部の納骨空間に設けた地下カロート底部には逆ピラミッドをつくり、エジプトのピラミッド同様、死者の魂の再生を意識させます。
「石でなければ成し得ないストーリー、得難い空間体験をつくれば、石の需要は決してなくならない」と押尾氏。その空間構築の手法やアイデアは大いに参考にしたいものです。
大法寺境内につくられた納骨堂「ぴらみ堂」の外観(タイトル写真)と俯瞰(小さいほうはペット用)。面積は62.41㎡(ペット用は4㎡)、高さは5.5m。外壁に白河石を百段積み、「石を積み重ねて祈る」「功徳を積む」という古来からの仏教信仰と所作を採り入れている(外構の砂利敷も白河石)。納骨堂であるとともに、深谷交差点の地域のシンボルとして、未来へと残すために設計デザインされた(写真:山崎英紀)
納骨堂の内部空間。壁・天井はコンクリート打放しを間接照明でライトアップ。床は白河石水磨き仕上げ。中央の柱状の台は地下カロート(合祀スペース)への投入口、同じく白河石水磨き
中央上部にご本尊の曼陀羅を納める
「ぴらみ堂」断面図。大小のどちらも地下カロート底部に逆ピラミッドをつくる。正と逆、つまり生と死の融合を図り、しっかりと遺骨を受け止めて土に還すことを意図する
カロート底部の逆ピラミッド
写真:UA(1点俯瞰写真は山崎英紀)
◇大法寺 ぴらみ堂
コーディネート:TSUNAGU / 森口純一
建築設計:UA / 押尾章治、伊東克明、神谷萌日
構造設計:中田捷夫研究室 / 中田捷夫、中田滋之、奥村民子
照明デザイン:ぼんぼり光環境計画 / 角舘まさひで、竹内俊雄、黒川祥穂
施工:髙橋建業
石工事:白井石材
◇一級建築士事務所UA
http://ua-inori.studio.design
http://www.ua-office.co.jp/
◇押尾章治氏のインタビュー記事はこちらに!
特別企画「建築家・押尾章治」