いしずえ
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彫刻家 樂雅臣「石と空間の美」
彫刻家 樂雅臣
石と空間の美
佐川美術館 樂吉左衞門館・茶室
(滋賀県守山市)
雄大な琵琶湖にのぞむ佐川美術館は敷地(約29,000㎡)の大部分を水庭が占めていて、そのみなもの連続性は、美術館自体が美しい湖面に浮かんでいるような錯覚を起こさせる。開館は1983年。日本画家・平山郁夫、彫刻家・佐藤忠良、そして陶芸家・十五代樂吉左衞門の作品コレクションでも知られる。
焼貫黒樂茶碗 吹馬
(十五代吉左衞門作)
2007年秋に竣工した〈樂吉左衞門館〉は、樂家・十五代吉左衞門(直入)氏が約5年の歳月をかけて設計した大作である。展示室と2つの茶室(広間・小間)などからなる空間を、水庭の水中をも使ってつくりあげた。すなわち地下2階部分に展示室、地下1階に3畳半の小間「盤陀庵(ばんだあん)」と「水露地」、地上1階に広間「俯仰軒(ふぎょうけん)」(8畳+鞘の間)等を設けている。
そして、その随所に、たとえば水露地や中潜り、盤陀庵の基盤、俯仰軒の外縁、蹲い(広間と小間)、水庭を渡る通路などに重厚な存在感を示す黒みかげ「ジンバブエブラック」を使う。いずれも彫刻家・樂雅臣による造形(制作協力:髙木嗣人氏、関ヶ原石材㈱)で、ごつごつと荒々しい割肌や矢穴の跡が空間に一層の緊張を与える。自然光やみなもをはしる風により満ち満ちる静寂をさえぎらない美しさが、その石肌に宿る。
*トップ画像:広間「俯仰軒」の外縁。巨大なジンバブエブラックを割肌で配する。水面からの厚みは15センチで水庭との一体感をはかる。月夜の風情も見たい
広間「俯仰軒」からの景色
広間蹲い(ジンバブエブラック割肌)。外縁の先、水庭内に据える
小間蹲い。ジンバブエブラックの巨石(割肌)による埋め蹲い。壁面のスリットから自然光が差す
ジンバブエブラック割肌による水露地の石組とバリ古材の腰掛
●撮影:畠山崇 / 画像提供:佐川美術館
◇佐川美術館
滋賀県守山市水保町北川2891
tel. 077-585-7800
https://www.sagawa-artmuseum.or.jp/
・開館時間:9時30分~17時(最終入館は16時30分まで)
・休館日:毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)・年末年始
・樂吉左衞門館の茶室見学は事前予約制・入館料別途1,000円
・茶室見学予約番号:077-585-7806(受付時間9:30~17:00)
◇樂雅臣公式ウェブサイト
https://masaomiraku.com/
◇樂雅臣氏のインタビューはこちら(サイト内)
https://stone-c.net/report/4792
*「月刊石材」2020年2月号より転載
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