いしずえ

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彫刻家 樂雅臣「石と空間の美」

2021.08.20

その他


彫刻家・樂雅臣 石と空間の美

彫刻家  樂雅臣
石と空間の美

上賀茂神社  北神饌所 -個展会場-
(京都市北区)


「僕にとって〈ホワイト・キューブ〉での展示は難しい。作品を展示空間に置くことにより世界観をつくり上げ、空間も作品に変えることを考えているからです。僕は自然が大好きだから、自然のなかでもいい。作品はいずれ自然へ還っていくことを前提につくっています。だから石(自然)を無理にコントロールせず、割肌にしても石が自ずと割れた面をそのまま生かすようにしています」

彫刻家・樂雅臣は、自身の設計で京都市内に新設したギャラリーでそう話した。内外装に石をふんだんに使用し、それらの加工・施工も作家本人が手がけている。どこか教会のような静謐な空気が漂い、単なる展示室(=ホワイト・キューブ)とは違う雰囲気がある。作品の展示空間へも及ぶ表現者としての思考を垣間見る。

その意味において、樂雅臣は京都での個展会場に上賀茂神社  北神饌所を選ぶ。創建は678年と伝えられ、我々の想像の及ばない数多のドラマを年輪に刻み込む。前回の個展ではその濃密な美しさをもつ空間に、樂が好んで使い、「創作のベース」ともいう黒みかげ「ジンバブエブラック」の作品を潜ませた。

照明は使わない。そう、きっと1300年以上変わらない光線が樂の黒い石の彫刻に美しい影を与えるのである。


*トップ画像:北神饌所内の展示風景。作品は手前が「輪廻碧」、奥は「Stonebox清流」、左に「輪廻突」

彫刻家・樂雅臣 石と空間の美北神饌所内での展示風景。自然光のなか、作品「輪廻虫喰い」「輪廻種子」「輪廻枝割」などが美しい姿を現す


彫刻家・樂雅臣 石と空間の美作品「輪廻 奏」(左)と「輪廻 扇」の展示風景


彫刻家・樂雅臣 石と空間の美作品「輪廻奏」。ジンバブエブラックの割肌とやわらかな研磨面との対比が美しい

●写真:樂雅臣 / 石:ジンバブエブラック


◇上賀茂神社  北神饌所
京都府京都市北区上賀茂本山339番地
https://www.kamigamojinja.jp/


こちらは彫刻家・樂雅臣氏が上賀茂神社  北神饌所(賀茂別雷神社、世界文化遺産)で開催した個展の会場風景です(会期:2015年5月19~30日)。この個展は樂家・十五代吉左衞門(直入)氏と作家本人による写真で、写真集『Darkness and Light』にまとめられています。購入など、お問い合わせは、下記の樂雅臣公式ウェブサイトへ。

◇樂雅臣公式ウェブサイト
https://masaomiraku.com/

◇樂雅臣氏のインタビューはこちら(サイト内)
https://stone-c.net/report/4792

「月刊石材」2020年2月号より転載