いしずえ

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祝!「北海道・北東北の縄文遺跡群」世界遺産登録!!

2021.12.12

その他

 2021(令和3)年7月27日、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産に登録されました。ウェブサイト「ストーンサークル」として、とても嬉しく思います。

 また『月刊石材』2021年8月号で、本遺跡群の世界遺産登録を推進するに当たって中心的な役割を担った岡田康博さんのインタビュー記事を掲載しています。登録までの年数を伺うと、「『三内丸山遺跡を世界遺産にしたい』と意思表示をしてから16年」とのことでした。東京2020オリンピック・パラリンピックを見ても、諦めない気持ちが何よりも大切であることを実感します。

 この縄文遺跡群が世界遺産に登録される前日には、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録されました。コロナ禍で自粛が求められるなか、日本の南北で明るい話題が出たことは、コロナ後の経済の活性化に多大に寄与することでしょう。

 この二つの世界遺産登録の少し前には、千葉県にある鋸山の石仏関連遺跡や石切り場跡の産業遺跡が、日本遺産の「候補地域」に認定されました。鋸山といえば、江戸時代後期から昭和の終わりまでの200年余りにわたって採掘が続いた房州石の産地です。

 この「候補地域」の認定制度は2021年度からで、候補地域に認定されると3年間、地域の活性化や観光振興の土台づくり等の事業を実施し、その後に行なわれる総括評価の結果がよければ、日本遺産に認定される可能性があるといいます。石に関する日本遺産は幾つかありますが、鋸山もその一つとなり、日本の石材産業の価値が認められる場所の追加に大いに期待したいです。

 『月刊石材』2021年6月号のカラーグラビアでは、新素材研究所の杉本博司先生が店舗の庭につくった環状列石を紹介しました。新素材研究所の作品については2019年、『月刊石材』の表紙とグラビア等で紹介したとおり。研究所名に反して、古代や中世、近世に用いられた素材や技法を研究し、それらの現代における再解釈と再興に取り組んでいます。

 世界遺産や日本遺産には、先人の知恵や技術が残されています。学ぶべきことは、たくさんあるはずです!

◎「北海道・北東北の縄文遺跡群」は17の考古遺跡で構成(北海道6、青森県8、岩手県1、秋田県2)
 北東アジアにおいて長期間継続した採集・漁労・狩猟による定住の開始、発展、成熟の過程及び精神文化の発達をよく示しており、農耕以前における人類の生活の在り方と、精緻で複雑な精神文化を顕著に示す物証です。また、縄文時代の初めから終わりまで、その変遷を連続して切れ目なく説明できるような構成になっています。


1、大平山元遺跡(青森県、史跡年代:13,000BCE)縄文時代のはじまりを示す遺跡

大平山元遺跡・石刃
出典:JOMON ARCHIVES
(外ヶ浜町教育委員会所蔵、田中義道撮影)


2、垣ノ島遺跡 (北海道、史跡年代:7,000BCE~1,000BCE)居住域と墓域の分離を示す集落跡

垣ノ島遺跡・大型土坑墓
出典:JOMON ARCHIVES(函館市教育委員会撮影)

3、北黄金貝塚(北海道、史跡年代:5,000BCE~3,500BCE)内浦湾に面した大規模な貝塚を伴う集落跡

北黄金貝塚・墓と貝塚
出典:JOMON ARCHIVES(伊達市教育委員会撮影)


4、田小屋野貝塚 (青森県、史跡年代:4,000BCE~2,000BCE) 古十三湖に面した貝塚を伴う集落跡

田小屋野貝塚・土坑墓
出典:JOMON ARCHIVES(つがる市教育委員会撮影)


5、二ツ森貝塚(青森県、史跡年代:3,500BCE~2,000BCE)海水性及び汽水性の貝塚が環境の変化を表す集落跡

二ツ森貝塚・埋葬された幼犬
出典:JOMON ARCHIVES(七戸町教育委員会撮影)


6、三内丸山遺跡(青森県、史跡年代:3,900BCE~2,200BCE)多様な施設で構成される大規模な拠点集落

三内丸山遺跡・環状配石墓
出典:JOMON ARCHIVES(青森県教育委員会撮影)


7、大船遺跡(北海道、史跡年代:3,500BCE~2,000BCE) 祭祀場が発達した拠点集落跡

大船遺跡・石皿
出典:JOMON ARCHIVES(函館市教育委員会所蔵)


8、御所野遺跡(岩手県、史跡年代:2,500BCE~2,000BCE)墓域と祭祀場を中心とした拠点集落

御所野遺跡・配石遺構と掘立柱建物
出典:JOMON ARCHIVES(一戸町教育委員会撮影)


9、入江・高砂貝塚(北海道、史跡年代:3,500BCE~800BCE) 共同の祭祀場や墓地を支えた集落跡

入江貝塚・竪穴建物跡
出典:JOMON ARCHIVES(洞爺湖町教育委員会撮影)


10、小牧野遺跡(青森県、史跡年代:2,000BCE)複雑な配石構造を持つ大規模な環状列石

小牧野遺跡・環状列石(小牧野式配列)
出典:JOMON ARCHIVES(青森市教育委員会撮影)


11、伊勢堂岱遺跡(秋田県、史跡年代:2,000BCE~1,700BCE)4つの環状列石が集中した祭祀遺跡

伊勢堂岱遺跡・環状列石 
出典:JOMON ARCHIVES(北秋田市教育委員会撮影)


12、大湯環状列石(秋田県、史跡年代:2,000BCE~1,500BCE)規則的な構造を示す2つの環状列石

大湯環状列石・野中堂環状列石
出典:JOMON ARCHIVES


13、キウス周堤墓群(北海道、史跡年代 1,200BCE)高い土手で囲まれた共同墓地

キウス周堤墓群・6号周堤墓
出典:JOMON ARCHIVES


14、大森勝山遺跡(青森県、史跡年代 1,000BCE)岩木山麓につくられた大規模な環状列石

大森勝山遺跡・環状列石と岩木山
出典:JOMON ARCHIVES(弘前市教育委員会所蔵)


15、入江・高砂貝塚(北海道、史跡年代:3,500BCE~800BCE)内浦湾に面した共同墓地

高砂貝塚・縄文時代後期の土坑墓
出典:JOMON ARCHIVES(洞爺湖町教育委員会撮影)


16、亀ヶ岡石器時代遺跡(青森県、史跡年代:1,000BCE~400BCE)芸術性豊かな土偶や多彩な副葬品が出土した共同墓地

亀ヶ岡石器時代遺跡・土坑墓の玉類出土状況
出典:JOMON ARCHIVES(つがる市教育委員会撮影)


17、是川石器時代遺跡(青森県、史跡年代:4,000BCE~400BCE)竪穴建物・土坑墓・水場・捨て場などを伴う集落跡

是川石器時代遺跡・土坑墓と赤染人骨
出典:JOMON ARCHIVES(八戸市教育委員会撮影)


※関連資産として、長七谷地貝塚(青森県)と鷲ノ木遺跡(北海道)があります。

 

※「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産登録を記念して、青森県企画政策部世界文化遺産登録推進室・世界文化遺産登録専門監の岡田康博さんに「縄文人の死生観とは?」をテーマにインタビュー取材しました。是非ご覧ください。
https://stone-c.net/report/5510