いしずえ

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松江藩の御止石「来待石」、まだまだあります!!

2022.09.25

その他

 
 来待石の用途について、美喜男さんはこう話す。

 「灯ろうの材料としての石の切り出しは、昭和40年代から増え、それ以前は家の土台や棟石、こたつ、かまど、排水溝の貯め桝など、いろいろなものを来待石でつくりました。灯ろうをつくり始めてから、石目が細かくて硬い風化に強い石を選ぶようになったと思います」

こたつの火床やかまどなど、さまざまな生活用具を来待石でつくった(「モニュメントミュージアム・来待ストーン」にて)

 来待石の材質は山頂部を除き、上から20~25メートルの層が安定しているそうだ。また、採石時は水分を含んでいることから青みを帯びた色合いだが、夏場で1ヵ月、冬場で3、4ヵ月経つと、水分が抜けて色が土色に変わり、落ちついた色合いになるという。

 「来待石の風化は、屋内ではほとんどないですね。耐用年数は数百年。実際に使ってないからわからないですけど(笑)。来待石は本当に味のあるよい石です。とくに敷石や階段石など、歩くと弾力があるというか、柔らかいというか、花崗岩とは違う感覚が最高ですね」

来待石来待石の階段(松江地方合同庁舎前の遊歩道にて)


 来待石を長年切り出してきた美喜男さんだからこそ、よくわかる感覚であろう。灯ろうは材質によって、屋外では早ければ20年から30年くらいで表面風化が始まる場合もあるが、数百年以上経っても風化の少ない来待石製品も数多く残っている。「置く場所によっては地面から水分を吸い、乾くことによって風化が始まる場合もある」と美喜男さんはいうが、その風化も来待石の個性の1つであり、わびさびの世界として喜ばれているのも事実だ。

 「日本庭園ブームなのか、『出雲石灯ろう』は昨年、中国の方から注文があり、ここ数年では見られない本数が売れました。また、来待石を使う公共工事が地元の松江市などであり、石を加工する仕事を組合員さんで分担できたのもよかったです。デザイナーさんが味のある石を探しているなかで、来待石に辿りつくケースもあるようで、業界以外の方からも来待石の使用に関する相談や、見積りをご依頼いただくこともあります」

古川寛子さん古川寛子さん


 こう話すのは、「モニュメントミュージアム・来待ストーン」の学芸員であり、来待石灯ろう協同組合の事務局を務める古川寛子さん。同組合は「出雲石灯ろう」を製造する石材店で組織し、設立は昭和50(1975)年。組合員数は現在8業者と後継者不足などから減少しているが、出雲石灯ろうを中心に来待石の建材、オブジェ、狛犬などの販売・PRなどを行なっている。


来待石製のモニュメント

「出雲石灯ろう」の輸出の歴史は古く、進駐軍が自国への土産物として持ち帰ったことから始まった。その後、外国産の石材の進出等により一時期ほぼ止まってしまったが、近年中国における日本の石灯籠の生産が縮小し、また、中国に来待石のような石がないことから、日本以外でも「出雲石灯ろう」のニーズはあると考えられ、現在は再び海外市場も視野に入ってきている。